コーヒータイム

日々読んだ本を紹介しています。英語や中国語書も時々。面白そうだと感じる本があれば、ぜひあなたも読んでみてください!

中国人と中国文化の宿痾のありかを心理学観点から(恐る恐る)さぐってみた〜武志紅『巨嬰国』

巨嬰、という単語が中国語にある。 意味は字面のごとく「巨大な赤ちゃん」、日本語でいうところの「見た目は大人、頭脳は子供」を指す単語だ。 この本の著者は、この単語からスタートして、現代中国社会にひそむ心理的問題を説明しようと試みている。 …と言…

育児についての読者質問に答えます〜佐々木正美『続 子どもへのまなざし』

『子どもへのまなざし』の続編。『子どもへのまなざし』を読んだ読者からの質問に、著者が丁寧にじっくりと答えていくスタイル。基本的なメッセージは『子どもへのまなざし』とほぼ同じだけれど、質問内容によって整理されている感じ。たとえばこういったこ…

アフガニスタンの人々に寄り添ったひとりの医師の死を考える〜中村哲『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い 作者:中村 哲 発売日: 2013/10/24 メディア: 単行本 現地三十年の体験を通して言えることは、私たちが己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足るということです。 (「はじめに」より) …

イギリスでの不動産投資の現場から、ユーモアを添えて〜Rob Dix “The Complete Guide to Property Investment”

The Complete Guide to Property Investment: How to survive & thrive in the new world of buy-to-let (English Edition) 作者:Dix, Rob 発売日: 2016/01/18 メディア: Kindle版 Property Investment for Beginners (English Edition) 作者:Dix, Rob 発売…

不動産会社社長がすすめる不動産投資〜市川周治『ゼロから始める不動産投資』

不動産投資、日本編。 著者は岡山県岡山市で不動産売買・賃貸・投資を手がける不動産会社を経営している。みずからも不動産投資の経験を持ち、投資用不動産の仲介も会社業務のひとつ。ゆえに本書はある程度ポジショントークとして読むべきだと思う。 本書は…

投資の世界に入るまえに、これだけはおさえたいこと〜塩見努『これからパンローリングの投資本を読む人へ』

パンローリング社は投資関係書籍の出版に定評がある。その中でも本書は「これからパンローリング社の投資書に手を出そうとする人向けの投資書」というおもしろい位置づけ。 実際読んでみると、パンローリング社のみならず、投資を始めようとするすべての人向…

1000年前に生きた女性だけれど、現代社会にいてもまったく不思議ではない〜田辺聖子『むかし、あけぼの 小説枕草子』

田辺聖子さんの名前を知ったのは、しばらく前に源氏物語「若紫」帖の定家本がみつかったというニュースが駆け巡ったとき。Twitter上で古典愛好者が大盛りあがりをみせ、定家本発見がいかにすごいことか力説する中で、誰かが田辺聖子の名前を出し、古典入門書…

【おすすめ】パフォーマンス評価をうまく使いこなせば改善につながるが、使い方を間違えると機能不全になる〜Jerry Z. Muller 『The Tyranny of Metrics』

The Tyranny of Metrics 作者:Muller, Jerry Z. 発売日: 2018/02/06 メディア: ハードカバー 測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか? 作者:ジェリー・Z・ミュラー 発売日: 2019/04/27 メディア: 単行本 【読む前と読んだあとで変わったこと】 「測…

【おすすめ】悩み相談で一番大切なのは、相手の答えをさぐること〜幡野広志『なんで僕に聞くんだろう。』

なんで僕に聞くんだろう。 作者:幡野 広志 発売日: 2020/02/06 メディア: 単行本 【読む前と読んだあとで変わったこと】 もし私がだれかに悩み相談をされたら、幡野さんと同じように、相手の話を聞き、相手の答えを探ることをまずは真剣に行いたいと思った。…

女性読者は心臓を日本刀で刺されたような衝撃を受けるだろう〜チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』

韓国社会で一大ベストセラーになったこの小説を遅ればせながら読んでみた感想。 「これ、女性読者には心臓を日本刀でぶっ刺されたような衝撃を与えそうだけど、男性読者には響くんだろうか」 ストーリーは至極単純だ。主人公キム・ジヨンは夫と1歳になる娘…

アメリカ発、子どもを成功者にするために必要なこと〜Paul Tough “How Children Succeed”

How Children Succeed: Grit Curiosity and the Hidden Power of Character 作者:Paul Tough 発売日: 2012 メディア: ハードカバー 成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか 作者:ポール・タフ 出版社/メーカー: 英治出版 発売日: 2014/09…

どこまでがフィクションですか?と聞いてみたい、是非〜有川ひろ『イマジン?』

どこまでがフィクションですか? ーーと、真っ先に原作者の有川ひろさんに聞きたい。是非聞きたい。 内容としては、大ヒットした映画『カメラを止めるな!』に似ている。映像制作会社に勤める主人公とまわりのスタッフが経験するさまざまな撮影現場を通して…

ロシア語通訳として見聞きした世界〜米原万里『心臓に毛が生えている理由』

『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の著者のエッセイ集。ロシア語通訳として政府高官やメディア取材に同行することがよくある著者ならではの視点から、日本との文化的違いが浮き彫りになるワンシーンを切り取った文章が多い。とくに著者の本業である通訳にか…

冷戦下のソビエト学校から〜米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

おそらく、冷戦時代のヨーロッパの共産主義陣営、そこで暮らす共産党員たちの子どもの喜怒哀楽や運命を、同級生の視線からノンフィクションにまとめた本はほかにないのではないだろうか。 著者の米原万里氏は日本共産党の幹部を父親にもち、父親のチェコスロ…

現代日本社会でも役立つ「全体主義」の解説書〜仲正昌樹『悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える』

ハンナ・アーレントという名前を最初から知っていたわけではない。新型コロナウイルスの感染者が乗船していたことで横浜港に留めおかれていた豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号、その内部感染管理がメチャクチャだとYouTubeで実名告発した岩田健太郎医師。…

英国貴族の執事たる者の矜持〜カズオ・イシグロ『日の名残り』

ノーベル文学賞を受賞したことで、日本で一躍脚光を浴びたカズオ・イシグロ氏の代表作。 一読してみたところ、日本でいう王朝平安文学のイメージに近い。優美な衣装を身にまとい、雅なあそびに興じる貴族たちに仕える使用人が、筆をふるい、華やかな日々を思…

仕事はしょせん人生の一部、日本はしょせん世界の一部〜谷本真由美『世界のどこでも生きられる!―外籠もりのススメ』

久しぶりに読書時間をとった。 Twitter上でMay_Roma(谷本真由美)をフォローしてからかなり経つが、その中でも本書のもととなったCakesの連載「世界のどこでも生きられる」はとても気に入っている。最近だとハリーとメーガンのイギリス王室脱退事件を解説し…

親との関係を冷静な目で見つめなおすことは、これからの人生で最も役立つ『不幸にする親 人生を奪われる子供』

不幸にする親 人生を奪われる子供 (講談社+α文庫) 作者: ダン・ニューハース,玉置悟 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/07/19 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (8件) を見る 一切の期待も、希望も、信頼ももたない。 〈母…

母娘関係に悩んでいたら読んでみよう、もしかしたら役に立てるかもしれない『毒親の棄て方: 娘のための自信回復マニュアル』

毒親の棄て方: 娘のための自信回復マニュアル 作者: スーザンフォワード,Susan Forward,羽田詩津子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/10/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る Mothers Who Can't Love: A Healing Guide for Daughter…

母娘関係に悩んだときに読んでみた『となりの脅迫者』

となりの脅迫者 (フェニックスシリーズ) 作者: スーザン・フォワード,亀井よし子 出版社/メーカー: パンローリング 発売日: 2012/06/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 9回 この商品を含むブログ (2件) を見る 『毒になる親』の著者、スーザン…

【おすすめ】一家に一冊、育児の百科事典『育児の百科』

定本 育児の百科〈上〉5カ月まで (岩波文庫) 作者:松田 道雄 発売日: 2007/12/14 メディア: 文庫 定本 育児の百科〈中〉5ヵ月から1歳6ヵ月まで (岩波文庫) 作者:松田 道雄 発売日: 2008/01/16 メディア: 文庫 定本 育児の百科〈下〉1歳6カ月から (岩波文庫) …

長いマラソンを走り抜けよう “Maximize Your Child’s Bilingual Ability”

Maximize Your Child's Bilingual Ability: Ideas and inspiration for even greater success and joy raising bilingual kids 作者: Adam Beck 出版社/メーカー: Bilingual Adventures 発売日: 2016/04/17 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを…

【おすすめ】子育ては、あわてず、あせらず、マイペース『子どもへのまなざし』

子どもへのまなざし (福音館の単行本) 作者: 佐々木正美,山脇百合子 出版社/メーカー: 福音館書店 発売日: 1998/07/10 メディア: 単行本 購入: 19人 クリック: 80回 この商品を含むブログ (81件) を見る 【読む前と読んだあとで変わったこと】 1歳半〜2歳…

親になったら起こる良いとは限らないこと『子育てのパラドックス』

子育てのパラドックスーー「親になること」は人生をどう変えるのか 作者: ジェニファー・シニア,高山真由美 出版社/メーカー: 英治出版 発売日: 2015/12/22 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 私はこういう「子育ては最上の喜び…

日々の暮らしの中からさっと書き留めた『無名仮名人名簿』

向田邦子さんのエッセイ集、第二弾。 『父の詫び状』は家庭事情が多かったが、このエッセイ集は、向田邦子さんが仕事をするようになってからのちょっとしたできごとを書いているものが多い。「昔はこうだったけれど、今はこうなった」系の話もちょくちょく出…

昭和のご家庭におじゃまします『父の詫び状』

初めて読んだ向田邦子さんの文章は「字のないはがき」というエッセイで、国語の教科書に載っていた。戦時中、集団疎開で東京を離れることになった、字が書けない妹に、父が自宅住所記入済みの葉書の束を渡して「元気なら、この葉書の裏に丸を書いて、一日一…

現代社会に生きる女性たちの危なっかしさをえぐり出す『依存症の女たち』

ノンフィクションライターの衿野未矢さんの著書は、何冊か読んだことがある。いずれも現代社会に生きる女性たちが抱える問題をとりあげている。文章はしっかりしていながら説教臭さがまるでなく、取材対象の女性たちへのこまやかな観察、いつわりのない関心…

中流家庭からの転落劇『下流の宴』

林真理子さんの『下流の宴』は、私にとって、時々読み返したくてたまらなくなる小説である。 とてもわかりやすい文章で、読んでいるとまるでドラマのようにワンシーンが思い浮かんでくる(実際にドラマ化もされている)。だけど、一皮まくると、「どろりとし…

快挙のうしろには地味な作業と確固たる信念がある『文春砲 スクープはいかにして生まれるのか?』

ベッキー不倫騒動をはじめとするスクープをかっとばし、「文春砲」と恐れられた週刊文春の編集長と特集班デスク担当、特派記者らによるノンフィクション。スクープが週刊文春に載るまでの苦労や、週刊文春としてふさわしい記事はなにかという信念、どのよう…

逃げるのは役立つ『逃げ出す勇気 自分で自分を傷つける前に』

新垣結衣主演ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で、逃げることのネガティブイメージがちょっと薄くなってきた気がするけれど、いまだに「嫌なことでも3年間は我慢しろ」「逃げ出すのは弱いやつだ」などといった言い方も根強い。本書はそこをとりあげて「逃…