コーヒータイム

日々読んだ本を紹介しています。英語や中国語書も時々。面白そうだと感じる本があれば、ぜひあなたも読んでみてください!

小説・エッセイ

ヘルマン・ヘッセ《車輪の下で》

子どものころ、この本を手に取ったことがある。小学生向けにやさしく書き直された児童文学だった。だが、少し読んだだけでやめてしまった。重苦しい雰囲気が好きになれなかった。 大人になって、最後まで読み通せるようになった。ドイツ文学ならではの抑揚の…

100 TINY TALES -Short Stories Told in Exactly One Hundred Words (by K. Kris Loomis)

“Drabble” という英語小説形式をご存知だろうか。100単語の短編小説である。ちょうど100単語、多すぎず少なすぎず。100単語で面白い物語を切り出すことはとても面白い挑戦である。 本書はひとりの小説家が100単語のDrabbleを100本書き下したもの。内容は実に…

カーレド・ホッセイニ《君のためなら千回でも》

読め。 と、渋谷交差点のど真ん中にでかでかと極彩色太字で書きたくなる。読まずに死ぬのはもったいない。 同時に、読み終わった本を壁に向かって力一杯投げつけたくなる。ふざけるなこれでてめえらのしたことをわずかなりとも帳消しにしたつもりか! と絶叫…

ガブリエル・ガルシア=マルケス《百年の孤独》

長い歳月がすぎて銃殺隊の前に立つはめになったとき、おそらくアウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、父親に連れられて初めて氷を見にいった、遠い昔のあの午後を思い出したにちがいない。 冒頭から引きこまれる、コロンビアを舞台としたノーベル文学賞受賞…

週末介護(岸本葉子著)

岸本葉子さんは「やわらかく知的なエッセイを書くひと」といわれるけれど、大賛成である。彼女の本を最初に読んだのは、『はたらくわたし』というエッセイストの仕事日記だったが、肩肘張らない、無駄に力が入っていない、やわらかい雰囲気の文章がとても好…

さくら日和(さくらももこ著)

昨年永眠されたさくらももこさんは、代表作『ちびまる子ちゃん』『コジコジ』のほかに、自身が「成長したまる子のお話」という位置付けでエッセイを多数発表している。 『さくら日和』は、さくらももこさんの離婚後初めて発表したエッセイ集で、冒頭に離婚報…

ももこの宝石物語(さくらももこ著)

さくらももこさんが去年永眠された。 『ちびまる子ちゃん』を読んだのは小学生の頃。まる子が給食の塩もみ野菜をきらって「バッタだってもうすこしいいもの食べてるよ」と言いながら残したところがかわいくてほのぼのしていた。 さくらももこさんはエッセイ…

弥栄の烏(阿部智里著)

悲しみながらもぞっとする結末。「弥栄」とはますます栄えるという意味だが、全部読み終わったあとにこのタイトルを見ると、ブラックジョークにしか見えない。 本書は八咫烏シリーズの六作目にして、第一部完結篇。舞台は八咫烏が支配する山内と人間界とを行…

黄昏の岸 暁の天(小野不由美著)

本作の主題はきっとこれ。 「絶対者が定めた、逆らえば死罰が下る〈理〉に支配されながらどう生きるか」 私たちはさまざまな法規制や社会規則に縛られながら生きている。人間社会がうまく回るためにはルールが必要だからだ(殺人が犯罪にならない社会を想像…

風の海 迷宮の岸(小野不由美著)

小野不由美先生の十二国記シリーズはかねてより好きだ。 さまざまな人々が登場する群像劇だが、中心となるのは二人。そのうち中嶋陽子の物語は読破したものの、もうひとり、高里要の物語はきちんと読んでいなかった。 12月に入り、本編最終作となるはずの原…

玉依姫(阿部智里著)

八咫烏シリーズの五作目。舞台は八咫烏が支配する世界から人間界に移る。普通の人間である志帆が、山内村に住まう伯父を訪ねるところから物語は始まる。 村総出で歓迎された志帆だったが、伯父が志帆を呼び戻したのは、山神の生贄にするためだった。なすすべ…

A・ルースルンド&S・トゥンベリ《熊と踊れ》(上)

いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人が選ぶ極上の犯罪小説《熊と踊れ》を読んでみた。これは上巻。 極上の犯罪小説『熊と踊れ』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる …

虚栄の黒船-小説エンロン(黒木亮著)

エンロン。アメリカのエネルギー会社であり、2001年に当時最大の簿外債務隠蔽が明るみに出て倒産したことで、コーポレートガバナンスで必ず話題に出るようになった会社。この会社で起こったことを、十数年間の国際金融経験があり、のちに小説家に転身した著…

テジュ・コール《オープン・シティ》

いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で紹介されたスゴ本《オープン・シティ》を読んでみた。 信頼できない読み手にさせる『オープン・シティ』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んで…

倒れるときは前のめり (有川浩著)

有川浩はとても好きな作家のひとりだ。どう紹介したら有川浩ファンじゃない方がこのエッセイ集を読みたくなってくれるのか、頭をひねらせるのもまた楽しい。 このブログは私の読書記録をつけるために立ち上げたが、面白い本にどんどん出会うにつれて、またほ…

崔曼莉《浮沈》(テレビドラマ原作小説)

久しぶりに中国語原文でビジネス小説を読んだ。これまで読んできた中では恋愛要素控えめでなかなか私好み。 物語は主人公喬莉(チョウ・リー)が朝に目覚めるところから始まる。 25歳の喬莉は大手外資系IT企業で受付嬢をしていたが、中国地区総裁が彼女のビ…

ブッツァーティ《タタール人の砂漠》

タタール人の砂漠 (岩波文庫) 作者: ブッツァーティ,脇功 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013/04/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (24件) を見る いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる…

【おすすめ】ウォッチメイカー (ジェフリー・ディーヴァー著)

尊敬するブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人に選ばれた徹夜小説。ブログでも紹介されている。明日の予定のない土曜の夜に待ちきれず手にとった。 『スゴ本』中の人が選ぶ、あなたを夢中にして寝かせない「徹夜小説」5作…

トルストイ《アンナ・カレーニナ》

2018年サッカーワールドカップロシア大会で、決勝トーナメント(個人的には英語のknock-out stageという表現が好きだ)が始まってから地元ロシアの快進撃が続いている。日本は惜しくもベルギーに0-2から3-2の逆転勝利という底力を見せつけられての敗退となった…

ひとつずつ、ひとつずつ (アン・ラモット著)

本を読むとき、私は考えてみることにしている。書き手はどんな人間で、どんな人生を送ってきて、なにを表現したくて書いたのか。書き手がどんな人間なのか読み取れるとまでは言わないが、少なくとも、書きたくてたまらないという熱意にはすぐに気づく。 読む…

アジアの隼 (黒木亮著)

この小説は著者の第二作にして、実際のベトナム勤務経験をベースに「書かずにはいられなかった」経済発展が勢いづくアジアを活写した。 物書きは最初の数作が最も書きたいこと、最も勢いあるものであり、その後は書き慣れてきて表現が落ち着くとともに、最初…

空棺の烏(阿部智里著)

八咫烏シリーズの四作目。舞台は人ではなく八咫烏が支配する世界。金烏(きんう)と冠する族長宗家が君臨し、東西南北の有力貴族の四家がそれぞれの領地を治める。 前作で猿に襲われた故郷と若宮の心のありようを知った雪哉が、決意を秘めて勁草院の扉をたたく…

【おすすめ】アラビアの夜の種族 (古川日出男著)

尊敬するブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人に選ばれた徹夜小説。 『スゴ本』中の人が選ぶ、あなたを夢中にして寝かせない「徹夜小説」5作品 - それどこ ハードカバーは二段組みで659頁もある大著だが、いやはや面白い。…

黄金の烏 (阿部智里著)

この小説で一番印象に残った言葉は、なぜか、「うまいもの、どうもありがとう」だ。 本作は八咫烏シリーズの三作目。舞台は人ではなく八咫烏が支配する世界。金烏(きんう)と冠する族長宗家が君臨し、東西南北の有力貴族の四家がそれぞれの領地を治める。 一…

沈鱼《朝九晚五》

これもちょこちょこ読みながら書きためていたもの。海外書籍の原文は3日以内に読み切るのはたいへんきびしいから、少しずつ読み進めて、読み終わったところで書評を書く。だいたい読み終わるのに数週間かかる。 この小説はテレビドラマ原作小説ではないけれ…

李可《杜拉拉升职记》(テレビドラマ原作小説)

八咫烏シリーズを読み進める前に、ちょこちょこ書きためていた書評を完成させてブログに載せることにした。三冊だけだから多くはない。 中国職場小説の草分け的存在であり、「ホワイトカラー(営業または人事担当者)が出世していく物語を通して、職場の複雑な…

烏は主を選ばない (阿部智里著)

本作は八咫烏シリーズの二作目。 舞台は同じく、人ではなく八咫烏が支配する世界。金烏(きんう)と冠する族長宗家が君臨し、東西南北の有力貴族の四家がそれぞれの領地を治める。一作目『烏に単は似合わない』は、次代族長たる若宮のお嫁候補とすべく、四家か…

烏に単は似合わない (阿部智里著)

途中でおもいきり世界をひっくり返された。 きらびやかな王朝絵巻の舞台を楽しんでいたら、半ばでいきなり舞台装置がすべて引き上げられ、鉄骨剥き出しの舞台裏に放り出されたような衝撃が後半でいきなり訪れた。 すべて読んだあと、ほんのりとした恐怖が残…

蒼穹の昴(4) (浅田次郎著)

大清帝国の断末魔をのせて、登場人物それぞれの運命は疾走する。ついに政権から離れることを決心した西太后、古き国法を変えんと理想を燃やす康有為(カン・ヨウウェイ)とその同志、北洋軍を掌握した袁世凱(ユアン・シーカイ)。歴史上名を残した人物達が次々…

蒼穹の昴(3) (浅田次郎著)

第3巻冒頭から、当時租界に住んでいた外国人達が登場する。主人公の梁文秀(リャン・ウェンシュウ)と春児(チュンル) だけではなく、小説はしだいに、動乱の時代に生きる人々の群像劇のようになっていく。 会津出身で天津に駐在しているジャーナリスト、岡圭…