コーヒータイム

日々読んだ本を紹介しています。英語や中国語書も時々。面白そうだと感じる本があれば、ぜひあなたも読んでみてください!

小説・エッセイ

エリートキャリアウーマンの騙し合い《浮沈》(テレビドラマ原作小説)

久しぶりに中国語原文でビジネス小説を読んだ。これまで読んできた中では恋愛要素控えめでなかなか私好み。 物語は主人公喬莉(チョウ・リー)が朝に目覚めるところから始まる。 25歳の喬莉は大手外資系IT企業で受付嬢をしていたが、中国地区総裁が彼女のビ…

中年危機に陥る前の予防接種《タタール人の砂漠》

タタール人の砂漠 (岩波文庫) 作者: ブッツァーティ,脇功 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013/04/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (24件) を見る いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる…

脳みそを揺さぶられるミステリーの傑作『ウォッチメイカー』

尊敬するブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人に選ばれた徹夜小説。ブログでも紹介されている。明日の予定のない土曜の夜に待ちきれず手にとった。 『スゴ本』中の人が選ぶ、あなたを夢中にして寝かせない「徹夜小説」5作…

男と女の視線がからみあうとき《アンナ・カレーニナ》

2018年サッカーワールドカップロシア大会で、決勝トーナメント(個人的には英語のknock-out stageという表現が好きだ)が始まってから地元ロシアの快進撃が続いている。日本は惜しくもベルギーに0-2から3-2の逆転勝利という底力を見せつけられての敗退となった…

もの書きの気分の浮き沈み『ひとつずつ、ひとつずつ』

本を読むとき、私は考えてみることにしている。書き手はどんな人間で、どんな人生を送ってきて、なにを表現したくて書いたのか。書き手がどんな人間なのか読み取れるとまでは言わないが、少なくとも、書きたくてたまらないという熱意にはすぐに気づく。 読む…

アジアの隼 (黒木亮著)

この小説は著者の第二作にして、実際のベトナム勤務経験をベースに「書かずにはいられなかった」経済発展が勢いづくアジアを活写した。 物書きは最初の数作が最も書きたいこと、最も勢いあるものであり、その後は書き慣れてきて表現が落ち着くとともに、最初…

空棺の烏(阿部智里著)

八咫烏シリーズの四作目。舞台は人ではなく八咫烏が支配する世界。金烏(きんう)と冠する族長宗家が君臨し、東西南北の有力貴族の四家がそれぞれの領地を治める。 前作で猿に襲われた故郷と若宮の心のありようを知った雪哉が、決意を秘めて勁草院の扉をたたく…

アラビアの夜の種族 (古川日出男著)

尊敬するブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人に選ばれた徹夜小説。 『スゴ本』中の人が選ぶ、あなたを夢中にして寝かせない「徹夜小説」5作品 - ソレドコ ハードカバーは二段組みで659頁もある大著だが、いやはや面白い。…

黄金の烏 (阿部智里著)

この小説で一番印象に残った言葉は、なぜか、「うまいもの、どうもありがとう」だ。 本作は八咫烏シリーズの三作目。舞台は人ではなく八咫烏が支配する世界。金烏(きんう)と冠する族長宗家が君臨し、東西南北の有力貴族の四家がそれぞれの領地を治める。 一…

沈鱼《朝九晚五》

これもちょこちょこ読みながら書きためていたもの。海外書籍の原文は3日以内に読み切るのはたいへんきびしいから、少しずつ読み進めて、読み終わったところで書評を書く。だいたい読み終わるのに数週間かかる。 この小説はテレビドラマ原作小説ではないけれ…

李可《杜拉拉升职记》(テレビドラマ原作小説)

八咫烏シリーズを読み進める前に、ちょこちょこ書きためていた書評を完成させてブログに載せることにした。三冊だけだから多くはない。 中国職場小説の草分け的存在であり、「ホワイトカラー(営業または人事担当者)が出世していく物語を通して、職場の複雑な…

烏は主を選ばない (阿部智里著)

本作は八咫烏シリーズの二作目。 舞台は同じく、人ではなく八咫烏が支配する世界。金烏(きんう)と冠する族長宗家が君臨し、東西南北の有力貴族の四家がそれぞれの領地を治める。一作目『烏に単は似合わない』は、次代族長たる若宮のお嫁候補とすべく、四家か…

烏に単は似合わない (阿部智里著)

途中でおもいきり世界をひっくり返された。 きらびやかな王朝絵巻の舞台を楽しんでいたら、半ばでいきなり舞台装置がすべて引き上げられ、鉄骨剥き出しの舞台裏に放り出されたような衝撃が後半でいきなり訪れた。 すべて読んだあと、ほんのりとした恐怖が残…

蒼穹の昴(4) (浅田次郎著)

大清帝国の断末魔をのせて、登場人物それぞれの運命は疾走する。ついに政権から離れることを決心した西太后、古き国法を変えんと理想を燃やす康有為(カン・ヨウウェイ)とその同志、北洋軍を掌握した袁世凱(ユアン・シーカイ)。歴史上名を残した人物達が次々…

蒼穹の昴(3) (浅田次郎著)

第3巻冒頭から、当時租界に住んでいた外国人達が登場する。主人公の梁文秀(リャン・ウェンシュウ)と春児(チュンル) だけではなく、小説はしだいに、動乱の時代に生きる人々の群像劇のようになっていく。 会津出身で天津に駐在しているジャーナリスト、岡圭…

蒼穹の昴(2) (浅田次郎著)

19世紀末、中国。清朝末期。「ラストエンペラー」愛新覚羅溥儀の一代前である光緒帝が立ち、悪名高き西太后が政権を握っていたころ。 第2巻は、主人公の一人、梁文秀(リャン・ウェンシュウ)が、同期からある伝説を聞くところから始まる。 頃は大清帝国建立…

蒼穹の昴(1) (浅田次郎著)

面白い小説だ。黄砂舞うかつての北京の空気のにおいまで感じとれるような。時代を生きる王侯貴族や政治闘争を書く一方で、作者は丹念に、貧しき民衆達の姿をも書く。都を追われた老宦官達や、道端で餓死を待つばかりの流民達、大道芸人で幾ばくかの日銭を稼…

周梅森《我主沉浮》(テレビドラマ原作小説)

同じ作者の小説をもう一冊。こちらも原作は人気政治小説で、全35話でテレビドラマ化されている。 このドラマは2005年6月放映開始とやや古い。 ドラマ企画前の2004年4月、中国国家広播電影電視総局(中国大陸でのすべてのメディア放送内容を審査し、不適切な内…

周梅森《人民的名义》(テレビドラマ原作小説)

中国の人気連続テレビドラマをオンラインで見ており、時には原作小説を読んでいる(どちらも原文)。面白いものをこのブログでも紹介したいと思う。 私は現代中国書籍ではビジネス小説、テレビドラマ原作、テクノロジー関連を読む。それ以外のジャンルにはあま…

バンダルの塔 (高杉良著)

この小説は実話をベースにしている。 大産油国イラン。石油産出にともない、天然ガスが大量に噴き出ていたが、活用されることなく焼却され、灼熱の砂漠にある油田をさらに焦がさんとするかのように、火柱が立ちのぼっていた。この天然ガスを産業利用すべく、…

シェエラザード(上)(下) (浅田次郎著)

シェエラザード(上) (講談社文庫) 作者: 浅田次郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2002/12/13 メディア: 文庫 購入: 6人 クリック: 520回 この商品を含むブログ (67件) を見る シェエラザード(下) (講談社文庫) 作者: 浅田次郎 出版社/メーカー: 講談社 …

千年の黙 異本源氏物語 平安推理絵巻』(森谷明子著)

千年の黙 異本源氏物語 平安推理絵巻 (創元推理文庫) 作者: 森谷明子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/07/21 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 平安時代は、物語の舞台としてとても好きな時代だ。貴族間の恋のかけひき、季節の花に…

陰日向に咲く (劇団ひとり著)

軽いテイストの小説。5人の"陽に当たらない落ちこぼれ"の人生がほんの一点で交差する群像劇を、5篇の短編小説で書いている。あえて時系列をはっきりさせず、ちょっとしたヒントから読み取らせるのが、なぞなぞを解くようで面白い。 1篇目。主人公のサラリ…

君の膵臓をたべたい (住野よる著)

映画にもなった大ヒット青春小説。近所の本屋で、山積みになった文庫本の前でエンドレスにプロモーション映像を流していたため、今でもヒロインの声をはっきりと思い出せる。が……今考えれば「君は嫌がるかもしれないけど、私はやっぱり、君の膵臓をたべたい…

脱・限界集落株式会社 (黒野伸一著)

『限界集落株式会社』の続き。止村経営が軌道に乗り、急激な成長はないものの持続的活況が見えてきたころ、麓に巨大ショッピングモールができる。東京の有名ブランド「マライア」が入り、アミューズメントパークやフードコートなども充実した総合エンターテ…

22年目の告白 ー私が殺人犯ですー (浜口倫太郎著)

藤原竜也、伊藤英明W主演で映画化されたことで、この小説のことを知った。 1995年1月14日から始まる5件の東京連続絞殺事件は、被害者の家族を拘束したうえで目撃者とする残酷極まりないものだった。4月27日の事件を最後に、犯人逮捕が果たされないまま時効を…

道を継ぐ (佐藤友美著)

この本を手に取ったのはタイトルと表紙が美しかったからで、取り上げられている鈴木三枝子さんという美容師のことは、本を開くまで知らなかった。 髪は邪魔にならなければいいやという考えの私であるが、それでも美容院でカットを終え、鏡を見て、髪が美しく…

シェリー《フランケンシュタイン》

「おれはおれをつくったおまえにも嫌われている。だとすれば 、おれに何の恩義もないほかの人間からどんな希望がもらえるというのか?はねつけられて嫌われるだけのことだ。」 哀れで惨めな醜い生き物、主人公フランケンシュタインの手で、納骨堂の骨と動物…

世界文学の名言 (クリストファー・ベルトン著)

著者もふれているように、たいていの文学の名言はその文学物語のストーリーの中で理解されるべきであるけれど、その部分だけでも心に触れてくるものをいくつか書く。 Fear of danger is ten thousand times more terrifying than danger itself. ーー危険へ…

チェーホフ《ワーニャ伯父さん》

ビジネス書が続いたので文学で息抜き。チェーホフの四大戯曲のひとつで、田舎生活の情景と副題が打たれているものだ。 私はロシア文学をあまり読まない。理由は人名が覚えにくすぎること。例えばこの本のタイトルにもなった主人公「ワーニャ伯父さん」のワー…