コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

肖像画で読み解く イギリス王室の物語 (君塚直隆著)

今日読んだのはイギリスの国立肖像画美術館に収められた肖像画と、描かれた人物それぞれの数奇なる人生について書いた本。王室に生まれ落ちた人々は多かれ少なかれ波瀾万丈な人生を歩んでいると思うけれど、その中で何人かの人生をぎゅっと凝縮して紹介している。

『バッキンガム宮殿の国王一家』(1913)に描かれたジョージ五世とその家族にはどこか陰鬱な雰囲気が漂う。もちろん画家は、国王一家肖像画の雰囲気を暗くしてやろうなどと意図したわけではないだろう。けれど現代の私達からそう見えるのは、この後の歴史を知っているからだ。

翌年、第一次世界大戦が始まる。ジョージ五世に濃い影を落とすこととなったのは、敵味方の王室いずれとも濃い血の繋がりがあったことだろうか。大戦に先立って暗殺されたギリシャ国王ゲオルギオス一世は母の弟。敵対するドイツ皇帝ヴィルヘルム二世は父の姉の息子。参戦したロシア皇帝ニコライ二世の妻アレクサンドラは父の妹の娘…

果たしてロイヤルファミリーに生まれることは幸せか?  と問いかけたくなる。家族ぐるみのつきあいがある王室にさえ時には刃を向けなければならない、そういう宿命がこの絵に現れている。