コーヒータイム

日々読んだ本の感想。時々日常。

「イラン -世界の火薬庫-」(宮田律著)を読んだ

アメリカとイランの険悪な外交関係はよく知られているが、その理由が私にはよく分からなかった。それに対して多少なりともヒントをくれると期待して選んだ一冊。

読んだあとの感想。…どっちもどっちじゃん。

 

第二次世界大戦中にソ連とイギリスの進駐により当時の国王は退位に追いこまれ、イギリスがイランの石油利権を握った。これに経済的苦境にあえいだイラン民衆が反発し、民族主義者モサッデクを中心とする政権がイラン石油産業を国有化したが、イラン石油が国際市場から排除されたため経済は好転しなかった。この辺りはベストセラー小説「海賊と呼ばれた男」にも登場している。その後アメリカとイギリスは、イラン経済が好転せず政権が求心力を失いつつあった時期に乗じてモサッデク打倒のクーデターを画策し、親米王権樹立に成功した。

この事件はイラン人の現在にいたる反米ナショナリズムのきっかけとなる。イラン人は誇り高い国民だ。自国の石油資源を占拠されるわ、内政干渉されるわでは怒るのも無理はない。

1979年にイラン革命が成立すると、イランは「革命の輸出」政策に移る。最大目標は「イスラムの聖地を不当に占拠している」イスラエルの打倒だ。これに影響を受けて樹立されたのがレバノンヒズボラを始めとするシーア派組織だ。アメリカはイスラエルと緊密な関係にあり、イランの一連の行動を強く非難した。イランが中国や北朝鮮パキスタンと協力体制にあること、特に弾道ミサイル開発において協力していることもアメリカには警戒材料だった。

これはアメリカの懸念も理解できる。北朝鮮が代替わりしてから頻繁にミサイル実験を繰り返し、ついにはアメリカ独立記念日にレッドラインである大陸間弾道ミサイルと思われるものを発射したのは、ごく最近のことで、ニュースで大きく報道された。どちらが技術提供していたにせよ、面白いはずがない。

一方、湾岸諸国はイランの活動が自国内のシーア派国民の反体制運動を支援していると警戒し、イランとの関係を冷やしていった。特にサウジアラビアとは強く対立している。

これについては今まさに争われている真っ最中だ。カタールが突然隣接する湾岸諸国から断交されたのはつい一ヶ月前である。テロ組織支援の疑いがあるからなどと言われているが、カタールがイランに比較的寛容であることは周知の事実で、かねてよりサウジアラビアを不快にしていた。貿易が滞ったカタールに援助したのは当のイランで、のちにトルコも加わっている。これはスンニ派湾岸諸国の分裂と覇権争いの一環としてとらえられ、まだまだ収束が見えない。イランにとっては、カタールスンニ派湾岸諸国と足並みをそろえないのは追い風になるだろう。