コーヒータイム

日々読んだ本の感想。時々日常。

「選ばれるプロフェッショナル -クライアントが本当に求めていること」(J.N.シース、A.ソーベル著)を読んだ

タイトルに一目惚れした本。

クライアントをもつ弁護士、会計士、経営アドバイザーなどのような人々が、どのようにしてクライアントと長期間にわたる信頼関係ーー専門知識やスキルをお金で買うだけではない関係ーーを築くか、名だたる企業の経営層へのインタビューを通して見えてきたことを、プロフェッショナルに必要な七つの特質にまとめ、トップレベルの仕事をしてきた人々の言葉とともに紹介している。

 

七つの特質のうち最初にくるのは「無私と自立」。いきなりたゆまぬ努力と鍛錬を必要とするものがきた。

すぐれたプロフェッショナルはクライアントの問題解決を献身的にサポートすると著者はいう。だがそれはクライアントの言うことに従うわけではない。クライアントの問題を我がごとのように考えながら、常に冷静さを保ち、客観的な立場に立つということだ。クライアントはプロフェッショナルが「適切な質問をし」「深いだけでなく幅広い知識を提供し」「一方的に話すだけでなく、こちらの話にも耳を傾け」てくれることを望んでいるのだから。

……私はこれまでこういうことができる人に会ったことはない、残念ながら。それだけ得難いのだろう。

次に来る特質は「共感力」「学習」。これもまた言うは易し行うは難しだ。

これができる人は身のまわりにそこそこいるのではないかと思う。ただし学習とは専門知識の掘り下げではなくディープジェネラリスト、すなわち専門知識の核がありながら幅広い知識をもつことを指す。これができる人はぐっと少なくなる。

4番目は「統合(Synthesis)」となっているが、この言葉は私にはピンとこなかった。これは「統合」という日本語より、オックスフォードオンライン英英辞典の"Synthesis: The combination of components or elements to form a connected whole."という定義の方がピンとくる。(意味としては「断片を組み合わせて、互いに結びついたひとつの全体像をつくること」というのが近いかな) 

鍵となるのは"connected whole"ーー寄せ集めではなく、互いに結びついたひとつのものであること。イメージとしてはジグソーパズルだろうか。ピースをつなげていくと、ある絵が見えてくる。この絵が全体像で、個々のピースはその絵を構成している一部だけれど、それだけではなんの絵やらわからない。ピースを組み合わせて絵を描いて見せるのが、プロフェッショナルというわけだ。ただしこの絵ーー基盤は、最初からそこにあるわけではなく、プロフェッショナルが目的意識をもって選ぶ必要がある。

……これができる人は、私の身近にまったくいないとは言わないが、きわめて少ない。片手で足りるほどか。

「決断力」「信念」そして「誠実さ」。これらを説明するために、著者が引用したあるプロフェッショナルの言葉がすべてだ。「自分がどんな決断をしようと安心して生きていくためには、どんな結果になろうとも自身が正しいと思える決断をしなければならない、ということに気づきました。私の価値観は私が判断するときの物差しであり、私の信念を支えるものになっています」。

 

こういう自己啓発本を選ぶとき、私は日本国内の著書だけではなく、海外著書もよく選ぶ。

日本でもクライアントとの信頼関係を築くことを強調するビジネス書は数多くあるけれど、基本的にクライアントとプロフェッショナルが「同じ日本に生まれ、同じ文化背景をもつ」ことを前提にしているので、こうすれば信頼関係を築くことができると説明するとき、具体例を数多く並べることをあまりしない傾向があると思う。読者もまた日本に生まれ、日本の文化になじむゆえに、長々と説明しなくても、身近で見聞きしたことを思い浮かべて納得してくれる。

これに対して海外では「同じ文化背景をもつ」という前提が成り立たない。国籍、文化、価値観、宗教、あらゆることが違う相手が本を手に取ることを考えて、その人達が読んで納得するように、理屈だけではなく、実例やインタビューをふんだんに盛りこみ、「これらの具体例があるからこういうことが考えられる」という書き方になる。その分読み応えがあって面白い。