コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

愛着障害 子供時代を引きずる人々 (岡田尊司著)

 

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

 

 

ここしばらく心理学関係の本をよく読んでいる。自分の中にあるもやもやした感覚を言語化するための助けとするためだ。その中でも読み応えがある一冊。

愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力である。人はそれぞれ特有の愛着スタイルをもっていて、対人関係だけでなく、感情や認知、行動に広く影響していると著者は主張する。安定した愛着スタイルをもつことができた人は、対人関係においても、仕事においても、高い適応力を示す。

愛着スタイルは、子供の頃の愛着パターンに大きく影響される。子供の愛着パターンは「安定型」「回避型」「抵抗/両価型」「混乱型」に分けられ、書名にもあるように、これを大人になるまで引きずるがために心理的問題を起こす人々がいると著者はいう。

「安定型」は健全な愛着反応だ。母親が離れると泣いたり不安がるが、母親が戻れば素直に再会を喜ぶ。

「回避型」は母親から引き離されてもほとんど無反応で、母親が安全基地として機能していないから最初から求めようとしない。児童養護施設やネグレクトの子供達に典型的で、その後反抗や攻撃性の問題がみられやすい。

「抵抗/両価型」は、母親から離れると激しく泣くのに、母親が戻ってきてもすぐ近づかずに拒んだり嫌がったりする。しかし、いったんくっつくとなかなか離れない。母親が安全基地として十分機能していないために、過剰な愛着反応を起こしているのだ。母親が世話するときと無関心なときの落差が大きい場合に典型的で、その後不安障害になるリスクが高く、いじめなどにあいやすい。

最後の「混乱型」は、回避型と抵抗型が入り混じった一貫性のない無秩序パターンだ。虐待を受けている子や母親の精神状態が不安定な子に典型的で、安全基地となるべき母親が逆に危険な場所となっているため混乱していると考えられる。境界性パーソナリティ障害のリスクが高い。

このような状況にさらされた子供は、自分なりにまわりに秩序をもたらそうとしてか、しだいにある特定パターンの行動をすることで親の注意関心を引こうとしたり、親から愛着を引き出そうとしたりする。支配的、従順的、あるいは操作的に振る舞うのだ。癇癪を起こしてずっと泣いたり暴れたり、いい子にしようとしたり、親がある行動をしてくれるよう仕向けたりする。これが、子供の愛着パターンを形作り、しだいに大人の愛着スタイルに結びついていく。

愛着スタイルが不安定な大人は、まず人とほどよい距離が取れない。次に建設的な怒りではなく非機能的な怒り、すなわちものごとをよくするための怒りではなく相手への肉体的・精神的攻撃のための怒りを抱きやすい。そして共感性が未発達で、他人に対して全か無か、好きか嫌いかで判断しがちになり、ここは好きだけどここは嫌い、というように全体的に考えるのができない傾向が強い。

 

著者がいう愛着スタイルが不安定な人の特徴は、私にもあてはまるものが多い。特に学生時代ははっきり出ていたため友達もできにくく、今でも連絡をとりあう大学時代の友人というものはほとんどいない。ちなみにこの本の巻末には愛着スタイル診断テストがあるが、私は「恐れ・回避型」の結果が出た。我ながら納得の結果である。

社会に出てから対人関係でつまずき反省する中で、心理学関係の本を読み漁るようになった。しだいに自分は対人関係について距離感をつかむのが苦手なのだと分かってきた。初対面でなれなれしく話したかと思えば、数年におよぶつきあいなのに未だ距離が縮まらなかったりする。まさに著者がいう不安定な愛着スタイルをとっていた。

そのことに気づいた今になっても愛着スタイルをなかなか変えることができず、距離を縮めたいのにできないもどかしさにかられたり苦しめられたりする。昨日よりは良くなっているはずだと信じて、自分と戦い続けている。

本書の中に一つ面白い方法があった。親から認められることを望むのをやめて「自分が自分の親になる」のだ。これは是非試してみたいと思う。