コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や健康法から身を守る! (NATROM著)

 

「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

 

 

小学校に上がる前後、家庭医学関連の分厚い本を児童書のように読みふけっていた時期があった。勉強のためではもちろんなく、怖いもの見たさで頭痛、腹痛、喀血などさまざまな症状について書かれているのを見たり(幸か不幸か写真掲載はなかった)、食事療法や漢方薬の紹介をレシピ本感覚で読んで面白がっていたりしていた。小学校の間にその本への興味はなくなり、その後医学関係に進むこともなかったが、今でも医学関係書にはなんとなく親しみを感じる。

だからと言って、今回手に取ったこの本に書いているような「ニセ医学」にひっかからないというわけではない。なぜなら同時期に、気功ーーまさにこの本で「ニセ医学」とされているもののひとつーーの本も読んでいたからだ。親族に気功の治療効果や長寿効果をかなり本気で信じていた人がおり、その人にすすめられた。小学校当時の私にとっては、魔法で病気が治ったと言われているようなもので、気功師が手をかざせば次々症状が良くなる患者の話を面白がりはしたものの、じき興味を失った。

 今思うと、子供時代にこうしたことに偶然触れたのはプラスに働いている。その後の人生でも、医学や気功が好奇心の対象になり、より多くを知ろうと思うからだ。自分で調べようと思えるだけで、与えられた知識を鵜呑みにする危険性が減る。難しいからよくわからないけれど偉い先生がそう言っているのだからそうに違いない、と思考停止するリスクが低くなる。

 

この本では多種多様な「ニセ医学」が紹介されている。ワクチン有害論、ステロイド有害論、がん治療不要論、ホメオパシー、水素水、一度は聞いたことがある言葉が多い。あの芸能人も使っていると煽りたてる広告をよく見る。

そのすべてについて著者は説明し、主張の矛盾点をついている。偏った情報のみ引用して結論を出しているもの、効いたという情報しかなく詳細不明なもの、いずれも「専門家による検証に堪えるものではない」と説明されている。

だが、ここからが難しいところで、信じる人は信じてしまう。がん患者が余命宣告を受けた時、藁にもすがる思いで代替療法に頼ることもあろう。医療知識が発達していない時代の常識や思いこみをそのまま信じ、訂正する機会がないまま生きてきた人もいよう。そういう人達が「正しい全面的な情報を得た上で」代替療法を選ぶことを著者は否定していない。著者が怒りをもって批判しているのは、人の命に関わるものであるにもかかわらず、「ニセ医学」をビジネスに利用するためにあえて正しい情報、全面的な情報を出さないやり方をする人々がいることだ。

 

この本には現代医療、代替療法、健康法それぞれについて項目があり、日本にある「ニセ医学」をほぼ網羅している。目次を見てもし「これ効くかどうか前から気になってた」という項目があれば、一章ごとは短くてすぐ読めるから、まずは読んでみてはいかがだろう。