コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

"Affairs of State: United States Grand Strategy and National Security" by Don Treichler

 

英語学習も兼ねて、戦略論関連の洋書原文に手を出してみた。

著者によると、戦争には九つの "Principal - 原則" がある。このうち原則1は原則2-3に、原則4は原則5-9すべてに関わる。(注: 私の限られた英語力で、一部意訳しているため、原文とニュアンスが違う可能性があります)

 

  1.Objective - 適切で明確な作戦目的をもつ。これはほかのすべての原則よりも優先されるべきである。朝鮮戦争ベトナム戦争ではアメリカ軍の作戦目的は揺れ動き、不本意な結果を招いた。

  2. Offensive - 先制攻撃。日本の真珠湾攻撃がこの好例。アメリカの太平洋艦隊を壊滅させることにより、一時的にではあるが戦力を削ごうとした(予期していたほどのダメージは与えられなかったが)。

  3. Mass - 集団行動。1942-1943年の間、ヒトラーソ連戦線でドイツ軍を1800マイルにわたって展開したが、あまりに広く展開しすぎたため陣地が薄くなり、ソ連につけ入る隙を与えた。

  4. Economy of Force - 効果的な戦力配分。すなわち、敵が想定しておらず、すぐには反撃できないような場所に自軍力を配置する。ノルマンディー上陸作戦は、正しい時期、正しい場所に兵力を集中させたことで成功した。

  5. Maneuver - 機動性。

  6. Unity of Command - 指揮系統の統一。BC216年にローマ兵がハンニバルに大敗したのは、二人の執政官に一日置きに軍隊を指揮させたのが理由のひとつだ。また、南北戦争の名将グラント将軍は、リンカーン大統領がグラント将軍に全指揮権を与え、政府はバックアップに徹したと述懐している。

  7. Security - 機密保持。自軍の軍事作戦を機密にする一方で、敵の軍事作戦を探る。第二次世界大戦期間、ドイツ軍は解読不可能といわれたエニグマ暗号を用いていた。このエニグマ暗号が解読されたことで、戦局は大きく前進した。またノルマンディー上陸作戦時には、目的地を敵に悟らせないよう、撹乱のための偽情報が流され、これに引っかかったヒトラーは主戦力を見当違いの場所に配置し、ノルマンディー上陸作戦の成功を招いた。

  8. Surprise - 奇襲。ミッドウェー海戦日本海軍はアメリカ海軍の奇襲により大打撃を受け、太平洋戦争のターニングポイントとなった。

  9. Simplicity - 明確な指揮命令による混乱防止。命令は簡潔で誤解のない言葉で書かれなくてはならない。

 

著者は国家戦略を" political inisiative - 政治的主導力"を得るためではなく、国土防衛のためだけでもなく、その背後にある核心的価値観、すなわち"personal freedom - 自由"、"human rights - 人権"、"rule of law - 法治"、"individual rights - 個人の権利"、"human dignity - 尊厳" を土台に構築されるべきだという。