コーヒータイム

日々読んだ本の感想。時々日常。

"Geopolitics of the Balkans and Beyond: What Do Russia, China, and United States Want?" (Filip Kovacevic)を読んだ

洋書チャレンジ第二弾。地政学についての本だ。タイトル通り、バルカン半島情勢を中心に述べたエッセイを一冊の本にまとめている。それぞれのエッセイは短いので、疲れる前に読み終わる。

バルカン半島はヨーロッパの南東部で、「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれてきた。ここは地政学的に西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、アジアの大国勢力がぶつかりあい、かつ、キリスト教地域とイスラム教地域の境目にあたり、さらに、さまざまな民族が住んでいるため民族紛争が起こりやすい、と、火種には事欠かない土地だ。第一次世界大戦バルカン半島の民族紛争が原因だった。近年では90年代のユーゴスラビア紛争がそれだ。

著者はバルカン半島でのアメリカやNATO (北大西洋条約機構) の勢力、それに対抗するロシア勢力、経済面からバルカン半島に介入しようとする中国勢力について丁寧に説明している。

最初のエッセイ "The Implication of the Russian-Turkish Gas Deal for the Future of NATO - ロシア-トルコ間ガス取引が示すNATOの将来" では、ロシアのプーチン大統領がトルコへの天然ガス供給を持ち出した2014年12月2日、ブリュッセルではトルコ代表も参加するNATO加盟国の会合が開かれ、アフガニスタンでの作戦について話し合われていたことに触れ、プーチンNATO加盟国の協力関係を切り崩しにきていると説く。だがトルコ代表は会合の議題には賛成を示していたものの、ロシアへの経済制裁には積極的ではなかった。ロシアが天然ガス供給を持ち出す前に、トルコはすでにある程度NATOから距離を置く決意をしていたといえる。トルコはEUへの加盟を見送られたままだし、エルドアン大統領は、選挙戦時にアメリカが自分の対立候補を支援したことを忘れてなどいない。もしトルコがロシアとの経済関係を強めるならば、NATOにとっては危機的状況になるだろうと著者は予言している。

 "The Southeast European Times: the US Military Propaganda Operation in the Balkans - Southeast European Times: アメリカ軍によるバルカン半島でのプロパガンダ戦略" というエッセイでは、著者はSoutheast Europian Timesという(大層な) 名前の新聞がいかに偏向報道をしているか、皮肉たっぷりに述べている。情報源はほぼアメリカやNATO加盟国政府関連組織に偏り、著者にインタビューしながら都合の悪い意見がでると大幅カットする、というように「公正でもなければ正確でもない」。著者はこのような偏向報道はもはや真実を覆い隠すことはできず、いずれ "US-NATO Empire - 帝国" の支配下から逃れるよう人びとは動き始めるだろう、としている。