この本で教えるのはサバイバル・インテリジェンスと、トラブル回避のための具体的方法だ。サバイバル・インテリジェンスとは、どんな緊急事態にも適切に対応できるという自信のことであり、危険な状況下で、その場にある道具を使って素早く、無駄なく反応することた。
現代社会でこのようなトラブル回避術はかつてないほど需要があるだろう。世界中で起こっているテロ攻撃、経済停滞による盗み・強盗・詐欺、誰もがーー国籍、仕事、住居地、家族構成にかかわらずーーその被害を受ける可能性がある。
日本人に限れば、ざっと思いつくだけでも、バングラデシュ首都ダッカのレストラン襲撃、シリアでの人質事件、アルジェリアでの天然ガス施設襲撃で邦人が犠牲になった。もし次に自分がそこに居合わせたら。ただ殺されるのを待つよりも、わずかでも生還の可能性をあげるために、一つでもいいからできることを持っておきたい。
著者はサバイバル・インテリジェンスを身につけるための七つのルールを考案した。
1. 適応能力を身につける。トラブル回避術を学んでいても、予期せぬ事態で実際にそれらを使えるかどうかで大きな違いが生まれる。
2. 自力でやる。自分や家族の運命を他人に委ねたいとは思わない。必要な道具が手元にあること、そして自分の命を守るために行動を起こすことが重要だ。
3. ヒーローになるな。トラブルが起きそうなところから去るのが最もよい対処法だ。
4. 行動することが命を救う。これは敵の照準から外れることとも言える。危険が迫っていればまず動くこと。
5. 印象が全て。自分は狙いやすいと思われていないか、隣の誰かは怪しい行動をとっていないか、常に注意を払う。
6. 基準値、つまり普段の状態に気づこう。そうすることで普段と違う危険な状態に気づける。
7. どんな時も状況を認識する。著者はこれをCIAで身につけた最も重要なことだという。自分の周りで起きていること、危険が近づいていることを認識できなければ、安全ではいられない。良い例が歩きスマホによる交通事故だ。
この中で著者がもっとも強調するのは状況認識、すなわち注意を払ってまわりでなにが起きているのか理解し、周囲の環境を把握し、危険に備え、必要ならば行動が起こせる状態だ。普段と違うことが起こるまでにはかならずサインがあるものだ。著者はいくつか例を挙げている:
⚫︎じっと見る。犯罪者は攻撃対象を居心地が悪くなるほどじっと見つめるものだ。
⚫︎歩調を合わす。
⚫︎気をそらす。スリや強盗の常套手段だ。
危険を認識したら、生死を分けるどんな状況下でもとにかく動くことが必要だとわきまえ、敵の照準から外れるために行動を起こす。よい方法の一つは人の多いところで振り向いて相手をじっと見つめ、声をかけること。自分の意図に獲物が気づいていることがわかると、犯罪者はたいてい警戒心が高まった獲物から離れ、別の獲物を探すからだ。