プロジェクトマネジメントの本に最近良く手が伸びる。
大工の棟梁といえば、現場の気難しい大工達をたたき上げの実力でまとめあげる漢、というイメージがあるが、この本を読んでみれば半分当たりであった。現場の大工達をまとめるには、圧倒的実力と、ついて行きたいと思わせる人間力も必要不可欠になる。この本では人間力の方にスポットをあてている。
チームメンバーに対しては、
「まずは、頭っから信用するんだよ。同じ目的を持ってプロとして集まってくれたんだから、最初はこっちが『よろしくな』って言ってやればいいってなもんよ」
任せたのに期待通りの仕上がりにならなかった時は、
「あれ、おかしいなって思ったら、自分の話がうまくないせいで、やってほしいことが伝わってないのかなって反省するね。…相手にやる気があるとかないとか、能力があるとかないとかを考えるのは、その後だよ」
万が一現場判断が間違っていた時は、
「そいつに任せたんだから 、任せた自分の責任よ。…誰かになにかを任せて、その誰かがミスをして失敗が大ごとになったとしたら、それは任せ方も悪いし、確認のやり方も悪いんだよ。だいたい大ごとになるまで気づかないなんて、気を緩め過ぎだよな」
棟梁達の話から伝わってくるのは、決断に際しては迷わずにすぐに決めること、それに加えて決めたことに責任をとるという覚悟があることだ。プロジェクトリーダーとはそういうもので、チームメンバーの意見が分かれたときに決断を求められ、プロジェクト成果を誰のせいでもなく自分の責任だと覚悟する。数十年生きてきた大工の棟梁達の言葉には、とてつもない重みが感じられた。