コーヒータイム

日々読んだ本の感想。時々日常。

『買収ファンド ハゲタカか、経営革命か』(和田勉著)を読んだ

買収ファンドという言葉にはあまりなじみがなかった。ファンドという言葉は米国発マネーゲームの一種で、破綻寸前の企業を安く買って高く売ることでもうけているというイメージだった。著者に言わせるとこれはハゲタカに近いイメージだそうだが、買収ファンドはそれだけではないというのが本書の内容だ。

そもそもファンドとは、機関投資家など多くの人からカネを集めた基金のこと。投資家から集めたカネは利子をつけて返さなければならない。利子をつけるためにファンドは基金を運用してもうけを出す。

買収ファンドは適正価格で投資先企業を買い、「企業価値を高める」。投資先企業の価値を高める作業こそが、買収ファンドと他の投資業とを分けるものだと著者はいう。大株主の権力を背景に、経営者や従業員を経営改革に向かわせる。投資先企業にはこれまでのしがらみからある程度解放されるメリットが生じ、再生後、改めて売却されるなり株式上場するなりして、ファンドは買ったときと売ったときの差額をもうけとして手にする。

一方ハゲタカファンドは適正価格よりずっと低い価格で投資先企業を買い、適正価格に近い価格で売ることでもうけを出す。ここにある違いは「企業価値を高める作業をするかどうか」だ。ハゲタカはそんなまどろっこしいことはしない。いかに安く買い叩き、高く売るかに興味が集中しているからだ。

ハゲタカファンドは論外だが、買収ファンドは「企業価値を高める」ことこそが腕の見せどころだ。そのために買収ファンドがやることは、たとえばできるだけ命令系統のすっきりした組織を作り、リーダー層が自分で判断して組織を動かせるようにする。加えて、会計処理システムを会社の実態が反映するように作り直す。言われてみれば、教科書的な経営組織作りにすぎないのだが、買収ファンド会社は一様に、日本企業にはそんな経営の基本もできていないところが多いと証言する。

ファンドに参加している人々は、そこに魅力を感じていることが多いという。自らがそれまでのキャリアで身につけた経営改革の手法を最大限使い、投資先企業が新たな成長軌道に乗ることに貢献すること、企業改革プロジェクトに参加することにやりがいを感じているから、ファンドに参加するのだ。この意味でファンドは、プロ経営者にとって、よい選択肢だと思う。