コーヒータイム

日々読んだ本の感想。時々日常。

『脱・限界集落株式会社』(黒野伸一著)を読んだ

限界集落株式会社』の続き。止村経営が軌道に乗り、急激な成長はないものの持続的活況が見えてきたころ、麓に巨大ショッピングモールができる。東京の有名ブランド「マライア」が入り、アミューズメントパークやフードコートなども充実した総合エンターテインメント施設だ。ショッピングモールが活況に沸く一方、駅前商店街はシャッター街と化しつつあった。そこへ駅前再開発計画が持ち上がる。夫婦喧嘩で家出同然に麓の「コトカフェ」に住みこみ、駅前商店街保存に奮闘する美穂。都会から流れてきた健太。コトカフェで働くつぐみ。多くの住民たちが賛成派と反対派に分かれ、熾烈な舌戦が始まる。

小説としては充分面白いが、読んでいてまず思ったのは「これはいわゆるシナリオ分岐がすべてうまい方向に転がった例なのだな」ということ。

美穂や琴子といった駅前商店街保存派が中心となった。コトカフェという実績があった。健太や剛のように駅前商店街保存に積極的な若者がいた。優というブレーンがいた。あかねの人脈で地元料理教室を立ち上げて宣伝できた。役所内部にも反対派がいてできる範囲で地元料理教室を広報してくれた。再開発派がはじいた数字を一から読みこんでそのカラクリに気づいた内部関係者がいた。地元不良が老人に酒を勧められて説教されただけで改心して、商店街で騒ぎを起こすことがなくなった。

……これだけ条件がそろった商店街など日本全国どこを探してもないだろう。『なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか』と読み比べると、どうしてもうまくいきすぎているのではないかという気がしてくる。

私自身、駅前商店街があるいくつかの街で暮らした。活気づいているところとそうでないところがあるのを見てきた。どうしても小説の内容と自分が見てきた駅前商店街とを重ねてしまい、「ここまで好条件が重なってやっと活況が見えてくるのか」という、ちょっとひねくれた意見を抱いてしまった。