コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

ラッキーをつかみ取る技術 (小杉俊哉著)

前著『30代はキャリアの転機』が面白かったから、同じ著者の本を探して読んだ。

初版2005年だから前著とそんなには出版時期が離れていないが、この本では著者の勢いは随分抑えられていると感じた。前著は著者自身の経験談に集中して「これが言いたいんだ!」という勢いが文章全体から滲んでいたが、本書は著者自身の経験談だけではなく友人知人の経験談や学術的見解も取り入れて、勢いだけではなく、ある程度客観的な、冷静で説得力のある文章に仕上げている。

私は勢いがある文章を期待していただけにちょっと意外ではあったが、勢いがよくても同じ経験談だけをずっと繰り返すと、それこそ著者が本書で言っている「狭い分野に閉じこもる」ことになりかねない。そうなればラッキーが遠ざかってしまうのだから、結果的に文章の勢いが抑えられたとしても、ラッキーを遠ざけないために必要なことだ。

 

本書では、ラッキーが多い人は偶然や運に恵まれているというより、そうなるような思考や行動パターンをもつのだと述べている。確かに考えてみればラッキーは大抵友人知人や仕事同僚など「人」が運んでくる。単純に考えても、人付合いが多い人は、人を寄せ付けない人よりも、ラッキーを運んでくる人に出逢う頻度が高くなる。

本書ではラッキーを引き寄せ、つかみ取るアプローチを大きく五つに括る。が、それに入る前にまず心がけなければいけないことがある。いい顔をすることだ。30代をすぎれば人は自分の顔に責任を持たなければならない。口角を上げる。できるだけ笑顔でいる。それだけでも近寄りやすくなる。

アプローチの一つ目は好奇心。それを押しとどめてはいけない。私はこれを心がけたい。

二つ目は持続。結果が出るまでやり尽くしてみる。私はこれをすでに取り入れていて、難しい仕事に取りかかる前に、自分自身に向かって「さあ、できることをしましょうか」と言うくせがついている。

三つ目は楽観。たった一人の前向きなコメントを心に置いてみる。本書では「あなたは自分が思っているより、ずっとたいした人間だ。まず、自分で認めてあげる。人からほめられたら、素直に受け取る」と強調している。これも最近できるようになった。同僚や上司が期待していたほどいい仕事ができなかったかもしれない…と落ちこみかけると「でも、私、よく頑張ったよ。」と自分自身に言ってあげる。そう言ってあげられるだけの頑張りと成果を思い浮かべることができる。

四つ目はリスクテイキング。今持っている何かを失うよりも、新しく得られる何かに賭けてみる。私はこれがなかなかできないのが課題。

五つ目は柔軟。一度意思決定したことでも、環境や状況の変化に伴い、いくらでも変化させる、そのように行動を変える。私は一度決めたらなかなか変えられない頑固なところがあるから、これも徐々に変えていきたい。

 

私がこの本で心に残った言葉を最後に書き留めておく。まずは人付きあいの中で怒りたくなるときの対処法。

効果的に感情を表現するには守るべきルールがあります。それは、相手の行為ではなく状況を対象にすることと、相手ではなく自分を主語にすることです。「私は~が悲しかった、残念だった」というような表現です。

次に出逢いについて。 

本気で必要だと思っているときには、必要な人があなたに引き寄せられてくる。ただし、あなたはその人にふさわしいように自分を高めている必要がある。

最後に楽しむことについて。私はたとえ必要なことであっても楽しいという動機付けがなければほんとうに身につかないから、この言葉に深くうなずいた。

ある大リーグのトッププレイヤーがインタビューで、大事な試合だと緊張しないかと聞かれ「どうして? 俺たちは野球をしている間だけは子供の頃に戻れるからほんとに楽しいんだ。何で緊張しなきゃならないんだ?」と真顔で答えていたのを聞いて合点がいきました。