コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

“Project Management in Oil and Gas Industry" (by Sikander Sultan)

 

PROJECT MANAGEMENT IN OIL AND GAS INDUSTRY (English Edition)

PROJECT MANAGEMENT IN OIL AND GAS INDUSTRY (English Edition)

 

 

コーヒーカップを手元においてノートパソコンで仕事をしているときにふと「コーヒーをキーボードにかければ壊れるかな?」と思った(もちろん試していない)。疲れているのに、さらに脳を疲れさせるような英語原書を読む。

この本はカラフルな図表をふんだんに使い、英語表現はわかりやすく、内容は初級参考書程度ながらプロジェクト遂行に必要なことをひととおり網羅している。タイトルにある石油・ガス業界に限らず一般的なプロジェクトの特徴をまとめているので、プロジェクト入門書としてもおすすめの一冊。

本のタイトルにある"Project Management"について、本文では次のように解説している。(日本語訳は私によるもの)

Project, which signifies a strategic set of interdeoendent tasks that are carried out within a defined timeline for the purpose of realising a desired outcome

ーー プロジェクトとは、望ましい成果物を得るために、限られた時間帯の中で行われる、おたがい関連性があるタスクを戦略的に組みあわせたもの。

Management, which plans, coordinates and controls the people who carry out the project activities so as to ensure efficient as well as effective completion of tasks

ーーマネジメントとは、効果的にかつ効率的にタスクを終わらせるために、計画立案し、調整し、プロジェクト業務を行う人々を管理監督すること。

 

この本は、ベテランコンサルタントが新米二人の講習を行うという設定で書かれている。クライアントが将来利益を得られるプロジェクトを選ぶための助言から、契約、遂行、コスト・スケジュール管理、品質管理、リスク管理、財務分析、さらには組織立上げまでひととおりこなすことを考えて、それぞれの概要を数ページでまとめている。最初から読んでもいいし、ある章だけ読んでもいい。重要なことは概念図で示されているため、本文を読まずに概念図をたどることもできる。各章最後にプロジェクト例が実際の企業名入りで紹介されており、ここだけでも結構楽しい読み物だ。

この本によると、石油・ガス業界のプロジェクトは60%が予算オーバー、70%がスケジュール超過という統計があるそう(ひどい数字だ)。投資額が年々大きくなるから、まずは経営判断として、有望なプロジェクトを慎重に選び、うまく管理しなければならない。

たとえばスケジュール超過の原因は顧客・労働者・コンサルタント・機械・材料・外的要因の6つに分けることができる。先週末読んだ『バンダルの塔』であれば、顧客、労働者、外的要因が主要因だろうか。要因が分かれば、力を入れるべきポイントもわかる。

ここ最近、石油・ガス業界のエンジニアリング会社が軒並み業績不振で苦しんでいるニュースをよく目にする。要因がわかったからといって、適切な対応ができるとは限らないということだろう。顧客が厄介な注文ばかり出しているせいかもしれないし、責任者が損切りをしぶってずるずる損失を出してしまったのかもしれないし、契約形態が良くないために最初から損失を出しやすい構造ができあがっていたせいかもしれない。さまざまな「人」の原因はあれど、このような基本に立ち返るための教科書は、いつでも考えを整理する役に立つと思う。