コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

「登山体」をつくる秘密のメソッド(安藤真由子著)

80歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎氏の登山データを測定し、登山のための身体作りをサポートすることに取り組んでいる著者が、これまで研究で明らかになった登山についての身体変化、望ましい方法をまとめた一冊。登山のための体力測定から基本的なストレッチやトレーニング方法、道具(ストック)を使った衝撃低減など、実用的な技術をカラーページで紹介しており、初心者向けにちょうどいい。

著者が紹介している登山のための身体作りと、以前読んだ『走れる身体になる 体幹「3S」メソッド』で紹介されていたランニングのための身体作りが、一部同じ、一部異なることが面白い。例えば足のつき方。登山の場合は足の裏全体で着地するフラットフッティングが原則。足は地面を蹴って離れるのではなく、腰周りの筋肉(腸腰筋や大腰筋)を使って引き上げる感覚で。一方ランニングの場合はかかとから拇指球を通ってつま先で地面を蹴り離す感覚。足外側に力が抜けないように気をつける。

どこの筋に刺激を与えているか? というトレーニングの原理原則をしっかり意識しながら行うことが大事であり、さらに筋の柔軟性を高めることもとても重要だと著者は強調する。この本で紹介されているトレーニングの原理原則は以下の通り。

 

(1)過負荷の原理:トレーニングの効果を得るためにはある程度強度の高い負荷で行わなくてはならない。つまり楽にできることはトレーニングになってない。

(2)特異性の原理:トレーニングの種類によって鍛えられる機能や部位が異なる。目的を持ってトレーニングを選択することが大事。

(3)可逆性の原理:継続が重要。トレーニングで得られた効果も、トレーニングをやめてしまえば元に戻る。

(4) 全面性の原則:トレーニングはバランスよく行わなければならない。登山やランニング、トレイルといった全身をバランスよく使うアウトドアスポーツは特にそう。

(5)自覚性の原則:鍛えている目的、どこをトレーニングしているか、自覚する。そうすれば自然に注意力がその部位に行くようになり、変化に敏感になる。

(6)漸進性の原則:体力や筋力が向上したら、徐々に負荷を上げていかなければならない。

(7)個別性の原則:トレーニングの内容や負荷は、性別や年齢、体力などによって個別に決めていかなければならない。初心者が運動慣れしている人と同じトレーニングをこなすのは難しい。

(8)反復性の原則:トレーニングの効果を得るためには、繰り返し行わなくてはならない。