ビジョナリー・カンパニーシリーズの第三冊。
タイトルにある通り、著者は企業衰退の枠組みを五段階に整理している。それぞれの段階でどのくらいの期間留まるかは企業によって違う。企業は第四段階までいっても引き返せるが、第五段階に転落したら衰退を止めることはもはやできない。
第一段階 成功から生まれる傲慢
第二段階 規律なき拡大路線
第三段階 リスクと問題の否認
第四段階 一発逆転策の追求
第五段階 屈服と凡庸な企業への転落か消滅
本書の本題からは少し外れるが、著者は本書の中で非常に耳が痛い見解を述べている。
警戒信号として何よりも重要な現象を一つだけ選ぶとするなら、主要なポストのうち、適切な人材が配置されているものの比率の低下をわたしは選ぶ。
不適切な人材と適切な人材の違いでとくに目立つ点の一つは、不適切な人材が自分はこれこれの「肩書き」をもっていると考えるのに対して、適切な人材が自分はこれこれに「責任」を負っていると考えることである。
ここまで読んで、有名な笑い話を思い出した。転職面接で何ができるか聞かれて「部長ができます」と答えた人がいた、というものだ。
この現象に対する著者の解釈はさらに容赦がない。不適切な人材が配置されるにあたり、能力不足を補うために官僚的制度が取り入れられるという。適切な人材が配置されていればそもそも煩雑な官僚的制度ーーたとえば決済に十人もの承認を必要とするような責任分散状態ーーは必要ない。適切な人材は、自分が負うべき最終責任をはっきり知っているからだ。
この解釈は、官僚的制度がなぜこれほど多くの組織、とりわけ公的組織で取り入れられているのか、ひとつの(かなり絶望感漂う)答えだと思う。