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【おすすめ】Augmented: Life in the Smart Lane” (by Brett King)

 

Augmented: Life in the Smart Lane

Augmented: Life in the Smart Lane

  • 作者: Brett King,Alex Lightman,J. P. Rangaswami,Andy Lark
  • 出版社/メーカー: Marshall Cavendish Intl
  • 発売日: 2016/06/07
  • メディア: ハードカバー
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中国の習近平総書記が2018年に新年の挨拶をするとき、書棚を背にするのはもはや恒例だが、その書棚に人工知能関係の書物が二冊増えており、人工知能大国にならんとする中国の野心を浮き彫りにしていると米メディアが報じた。確かに(「西洋的な」個人情報保護の観点をおいておくとすれば)個人情報を含むビッグデータがほとんど制限なしで利用できるとされる中国では、機械学習人工知能分野に有利な条件がそろう。

この本はそのうちの一冊。人工知能などの技術が人類の未来にどう影響するのかを探究する。

人工知能といえば「将来人工知能に取って代わられる職業はなにか」の議論がさかんだが、これについて著者は、AIにしろなんにしろ「画期的」発明にはアンチがつきもので、別に驚くことではないという。(日本語訳は私による意訳)

I wasn’t there to see it but I imagine that the invention of the wheel was a pretty big deal at the time. As with every major invention since though, I’m also fairly sure that there was a priest, shaman, village elder, local trader or town official who cautioned why the wheel was bad for the town, how it was going to destroy jobs and lead to disasters of possibly apocalyptic proportions.

(私はその場で見ていたわけではないが、おそらく車輪の発明はその時代ではとても重大な出来事だったのだろう。すべての重大な発明がそうであっただろうが、車輪が発明されたときも、神父、巫覡、村の長老、地元の商人、町の有力者といった人々が、車輪はいかに良くないものか、車輪によっていかに雇用が破壊され、悲劇的状況がもたらされるか説いたであろうと確信している)

 

あなたは自分の働く業界そのものが最新技術によって破壊されるかもしれないと想像できるだろうか?  たとえばかつてT型フォードの登場で馬車製造業がほぼ消滅したように、現在Uberがタクシー業界大手企業を破産に追いこんだように、あるいは将来弁護士や医師がAIにとって代わられるかもしれないように?  業界そのものが縮小どころか破壊されたとしたら、あなたはどこにキャリアの活路を見出すべきだろう?

本書を読みながら、そんなブレインストーミングをすることは決して無益ではない。

 

本書の中で著者は破壊的技術を列挙している。

  1. Artificial Intelligence
  2. Distributed, embedded experiences
  3. Smart Infrastructure
  4. Gene Editing and HealthTech

さらに、開発されたばかりだが、今後長期間にわたって破壊的作用を及ぼすであろう技術を2つあげている。

  1. Metamaterials
  2. 3D Printing

本書ではいずれの破壊的技術も「人類の生活をよりよくするもの」と肯定的に捉えられている。超高齢化社会によって数百万人も不足するであろう看護師の代わりに看護ロボットを導入するなどだ。著者はとくにアメリカと日本にケアロボット導入の必要性があることを説いている。ケアロボットは外国人労働者受け入れよりも効果的だという。

ロボットは人間のように「看護」することができない、という批判もあるだろうが、それに対して著者は以下のように述べている。(日本語は私による意訳)

A robot has no judgement and is not going to get frustrated or feel insulted. Properly designed and operated, robots won’t get exasperated hearing the same story for the 15th time that day. Robots can take abuse, verbal and physical, or deal with unpleasant sounds or smells, and not retaliate or walk out. A robot can be in the room 24/ 7 and never need a break or vacation. Carebots will be able to help people live better, longer and with more freedom than people of the past ever thought possible.

(ロボットは快・不快を判断せず、フラストレーションをためこむことも、侮辱されたと感じることもない。よく設計され稼働されているロボットは、同じ話を一日に15回聞かされても憤慨しない。虐待や暴言を我慢でき、不快な音や匂いに耐えられ、仕返ししたり部屋から出ていったりしない。24時間365日部屋にいることができ、休憩や休暇を必要としない。ケアロボットはこれまでの人々が考えつくよりもよりよく、より長く、より自由に、人々が生きる手助けをしてくれる。)

介護現場崩壊、認知症看護の地獄がしだいに世間に知られてきたこの時世、著者の主張には説得力がある。認知症患者に、家族や看護師が世話する以外の選択肢ーーロボットーーがあるのなら、それが救いとなる人々もいるのではないだろうか。

 

一部では技術進歩がこれまで人間がやってきた仕事を奪うことも書かれているが、その場合でも奪う以上の仕事を生み出す、というのが著者の主張だ。なぜならそうやって歴史は進んできたからだ。著者は現時点での最新技術だけではなく、過去の技術史を一緒に紹介することで、このことを説明している。

おそらく今の時代、機械や人工知能に奪われない仕事を探すよりも、そうなったときに別職種に転職できる柔軟性を身につけるほうがずっと役立つだろう。

ちなみに本書の最後に、今後敗者となるであろう業界、成功するであろう業界がリストアップされている。残念ながら私が今居る業界は敗者側に分類されている。危機感をもって情報収集を始めるきっかけになったという意味でも、この本には感謝している。