コーヒータイム

日々読んだ本を紹介しています。英語や中国語書も時々。面白そうだと感じる本があれば、ぜひあなたも読んでみてください!

蒼穹の昴(3) (浅田次郎著)

第3巻冒頭から、当時租界に住んでいた外国人達が登場する。主人公の梁文秀(リャン・ウェンシュウ)と春児(チュンル) だけではなく、小説はしだいに、動乱の時代に生きる人々の群像劇のようになっていく。

会津出身で天津に駐在しているジャーナリスト、岡圭之介は、ニューヨークタイムス特派員のトーマス・バートンと親しくしている。トムはニューヨークタイムスに西太后の記事を面白おかしく書き立て、悪女西太后のイメージを広めることに成功していた。

だが同じトムの口から、西太后は息子によく似た現皇帝光緒帝を母親として愛するひとりの女性にすぎず、光緒帝が忍びないからこそ政治に関わり続けているのであり、清の民は彼女を慈悲深い生き仏よと慕っているという真逆の現実が語られる。ならばなぜあんな記事を書いたと気色ばむ岡に、トムは「この国を植民地にしないためには、まず古い仏を倒ねばならない」と言い放つ。

 

第3巻のハイライトは、李鴻章がイギリス公使と香港租借について交渉するシーンだ。居並ぶイギリス公使達とジャーナリストを前にして李鴻章は高らかに宣言する。香港を九九年間租借してやろう、と。その宣言の真の意図をトムは見抜き、プレジデント・リーと呼ばれた李鴻章という人物に戦慄する。