コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

なぜ男は「そんなこと」で怒るのか(安間 伸著)

女が男にとって謎であるように、男は女にとって謎である。変なタイミングで怒ったり、話を聞いてほしいだけなのに話の腰を折りまくったあげくヘソをまげたり、浮気にトンチキな言いわけをしたり。

そんな男という生物の特性を、「まとめるとたったこれだけの話」という身もふたもないタイトルの章で、著者はそれこそ身もふたも底もないことをさくっと書いている。

男が怒る根源的な理由は、「資源の浪費」と「尊厳の否定」がほとんど。男は資源の浪費に対しては「怒り」、尊厳の否定に対しては「恨み」の感情を持つ。

「怒り」は人間関係の修復が可能だが、繰り返し馬鹿にして「恨み」にまで至ると修復不能。男のやる気の9割は勘違いによるもの。本人も周囲もそれをうまく使いたい。

 

男のやる気の9割は勘違いによると書いてしまうのもすごい。怒る理由がふたつしかないのなら相当付きあいやすいのでは?  と思うが、どんな行動がそれにあてはまるのか、判断するのはやっぱり難しい。寝起きにすぐさま優先度の低い話をしてはならない、なんてこの本以外で読んだことはまだない。

男がいま「重要だと考えている問題の解決」を邪魔されたり、「貴重だと考えている時間・認知資源・会話資源」などを無駄遣いされると、怒りの感情が湧いてきます。男の行動は資源獲得に向かっているため、そのための時間や労力を浪費されると不快になるのです。

コンサル男などはまさにこの典型だ。「それで結論は?」と聞いてくる彼らの脳は、最短距離でゴールにたどり着くよう訓練を重ねている。

 

男を何度も怒らせたり、繰り返し馬鹿にしていると、「尊厳の否定」をしたことになります。これは修復不能な「恨み」「憎しみ」という感情として蓄積します。これはたとえ自分が損をしても、相手には得をさせないという強い負の感情です。

モンテ・クリスト伯』に代表される復讐譚は、男の恨みを余すことなく書ききっている。馬鹿にされた恨みをけっして忘れず、見返すために死にものぐるいで努力して、ついには立身出世する男も数多い。とはいえ褒めすぎるのもよくない。むしろ逆効果の危険性がある。

何もしていないときに褒めるのも、かえって警戒心を呼びます。...そして口先で褒めれば簡単に利用できると思われている自分自身に失望します。心底舐められているのだと本当に本当にがっかりします(大事なことなので二度言いました)。何もしていないのに褒めるのは、「繰り返し軽んじて馬鹿にする態度に近い」と覚えてください。

まこと、男は単純でめんどくさい生物なのだ。