コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

脳みそを揺さぶられるミステリーの傑作『ウォッチメイカー』

尊敬するブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人に選ばれた徹夜小説。ブログでも紹介されている。明日の予定のない土曜の夜に待ちきれず手にとった。

『スゴ本』中の人が選ぶ、あなたを夢中にして寝かせない「徹夜小説」5作品 - ソレドコ

徹夜小説『ウォッチメイカー』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

 

途中で頭がくらくらしていったん休憩が必要になった。あまりにもたて続けにこれまで読んできた物語が塗りかえられて、息切れしている。脳は興奮しきっていてこのままではオーバーヒートするから、冷やさなければならなくなった。こんなことは初めてだ。全力で殴られる感覚。まさにこの表現がふさわしい。

誰が嘘をついている? 誰の言葉が事実と同じ?

読んでいると何度もそう確認したくなる。主人公の四肢麻痺の科学捜査専門家 (いわゆる安楽椅子探偵) リンカーン・ライム、その相棒で現場検証のエキスパートであるアメリア・サックス、協力関係にある刑事ロン・セリットー。これらの人々はまあさすがに信用できるとしても、それ以外の登場人物の全員を疑いの目で見ずにはいられなくなるほど、見事に作者に騙される。ほっと一息つく瞬間を狙ってとんでもないことを挿しこまれるから、また息を殺して続きを読むはめになり、いっこうに心臓が落ち着かない。

この本は確かに、そう、ある地点を過ぎればそこから先はなにが起ころうとも本を離す気になれないだろう。最後まで読み終えるまで。