コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

ギリシアの神様はとんでもないやつばかり『知れば知るほど面白いギリシア神話』

聖書とともに西洋社会の二大精神支柱と呼ばれるギリシア神話だが、さまざまな物語が口伝で伝えられてきたため、内容にまとまりがなかったり違う物語が流通したりする。本書はギリシア神話の一般的な内容をまとめたもので、入門書としてさっと読むにはぴったり。

ギリシア神話は、現実にギリシア人の始祖が古代世界を生き、さまざまな地方を征服したり征服されたりしながら、現地の神話を取り入れてしだいに成立していった。このため神々の性格に地域性が見られることがある。本書では、それをおおまかなギリシア歴史とともに紹介しており、それもまた魅力のひとつ。

 

ギリシア神話では、神々の系譜を作り出すと頭が痛くなることうけあいだ。最初に混沌から生まれた大地の女神ガイアはともかく、その後生まれた神々は、兄弟姉妹、父母の兄弟姉妹、さらには自分の血を引く子孫達とも次々恋してはどんどん子供を産むのである。

最初に生まれた神々はとても数が少ないため兄弟姉妹婚は仕方ないにせよ、主に天界一の浮気者最高神ゼウスを筆頭に、もはや誰が誰の子孫なのかもわからない子作りラッシュが続く。本書ではところどころで系譜を入れて分かりやすくしようとしているが、なお混乱する。たとえば有名なパリスの審判に登場する三美神では、ヘラはゼウスの妹にして正妻、アテナはゼウスの姪にして最初の妻メティスとの子、アプロディーテはゼウスの祖父ウラノスから単性生殖で生まれたという具合。これだけでも頭痛がする。

 

時代が下ると、しだいに神話が現実世界の人物と混じりあう。神々の血を引く者たちやその子孫が、現実世界の支配者として登場するのだ。こうして神話は現実世界の歴史物語と合流し、やがて遺跡として姿をあらわす。本書はローマ建国で終わるが、ここからギリシアやローマの歴史を読んでいくとなお楽しめるだろう。