コーヒータイム

日々読んだ本を紹介しています。英語や中国語書も時々。面白そうだと感じる本があれば、ぜひあなたも読んでみてください!

「絶筆」で人間を読む -画家は最後に何を描いたか- (中野京子著)

 

《怖い絵》シリーズで人気の中野京子さんは、これまで「絵は見て感じるもの」と言われてきた絵画に、時代背景、画家の思い、歴史事情などの知識を加えることで、より楽しむことができると教えてくれた。

以前、私はブログにこう書いた。だがそれだけではなかった。

中野京子さんは本書の中で「古典派西洋画は知識をもって読み解くものだった。たまたま日本が明治時代に西洋画を受け入れたときに印象派の時期にあたっていたから、『絵はそのまま見て感じるもの』という考え方が定着した。」と喝破している。

いま定着している考え方は、実はたまたまそうなったのであり、長い歴史の中で何度も変わってきた考え方のひとつにすぎないかもしれない。

そう思うと目が覚める思いがする。

 

本書はタイトル通りさまざまな画家の「絶筆」を紹介することで、画家の一生を振り返る。短い人物伝記の寄せ集めといえる。

官能的なヴィーナスを画布に残しながら、激動の時代にさらされて晩年の作品から官能を消し去ってしまったボッティチェリ。鋭い眼差しの《俺はまだ学ぶぞ》というタイトルの自画像を残したゴヤ。強い権力欲に支配され、地位なくしたあとは魂のこもらない絵画しか残さなかったダヴィッド…画家はそれぞれの一生をかけて傑作を残し、中野京子さんはそれを豊かな物語としてこの本にまとめてくれた。読む教養ともいうべき本。