コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

想像の中のアメリカ留学『英語の授業では教えてくれない自分を変える英語』

本書は15歳の中学生・峰岸陸がアメリカ留学してからハーバード・ビジネス・スクールに入るまでの物語形式で、物語を通して、日本とアメリカの文化的違いを説明しようとしている。ところどころで会話文として英語が登場しており、章末に役に立つ表現をまとめているくらいで、単語や文法についてはほとんど触れない。

あることを説明するためにストーリー仕立てにすることはとても良い方法だけれど、本一冊書けるほど長いストーリーにすると、目的がはっきりしすぎているために物語構成としては無理がでてくる。本書はまさにその罠におちたていた、というのがわたしの感想だ。陸のアメリカ留学経験は、紹介したいシチュエーションにもっていくために、かなり強引な物語展開が多く、途中からつまらなく感じてきてしまった。物語展開が強引であるゆえに「アメリカのことを知らない著者が書いた、想像の中のアメリカ留学もの」に思えてしまう。

説明のための物語形式でありながら、物語としても充分面白い読み物としては、『ソフィーの世界』が筆頭だろう。分厚い本だ。本当に異文化理解のことを書くならば、たかが200ページ程度ではとても足りない。本書では、せいぜい上澄みを掬うにとどまってしまった。