コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

まる子の人生こんなものさ『さくら日和』

昨年永眠されたさくらももこさんは、代表作『ちびまる子ちゃん』『コジコジ』のほかに、自身が「成長したまる子のお話」という位置付けでエッセイを多数発表している。

『さくら日和』は、さくらももこさんの離婚後初めて発表したエッセイ集で、冒頭に離婚報告が載せられている。「所詮、まる子の人生なんて、一回ぐらいこんな失敗もあるさと思ってもらえると有難い」とさらりと書いているけれど、実際には離婚成立まで相当大変だったようだ。

重い話から始まったかと思えば、親友の兄をさくらプロダクションに転職させようとするだの、集英社の担当編集者の新福さんのお疲れさま会での「新福さんをほめたたえよう大作戦」だの、ブラックさが一抹拭えないながらも全力疾走でくだらなく笑える日々を書きつらねる。突然真剣に寝相を研究しだすなど、一体なにをしたいのやらわからない企画を持ちあげる。離婚した一児の母でもまる子はまる子だなと、ため息をつきつつ、しょうがないねェと笑いたくなる。

わたしにとって、エッセイはなんだか漫画のまる子の将来を覗き見ているような、不可思議な気恥ずかしさを生じさせる。まる子がさくらももこさんの子供時代で、さくらももこさんがまる子の未来像ということが、どうもうまく呑みこめない。小生意気な漫画のまる子が成長して落ち着くところを見たくないような、どこか苦い気分にさせられた。