コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

不動産投資もひとつの選択肢、かもしれない〜稲垣浩之『不動産投資専門税理士が明かす 金持ち大家さんが買う物件 買わない物件』

新型コロナウイルス感染爆発のために世界規模で経済状況が悪化しており、日本国内でも休業・廃業が相次いでいる。わが家もいつ不況の大波をかぶって給与カットされるかわからないため、ここしばらく投資関係の本に手がのびている。

 

本書はタイトルの通り、不動産投資専門税理士が、お金の面から不動産投資について説明したもの。「海外に比べれば表面利回りはまだ高いです」「低金利時代にのって不動産投資をしましょう」「不動産投資家はここ数年増えてきました、みんなやっているので不動産投資をしましょう」などのポジショントークはあるものの、お金関係をしっかり説明しており、不動産投資前にお金の流れについてしっかり調査するために役立つ。土地なら路線価、建物なら固定資産税評価額を元とした再調達価格が基準になる、これらが銀行融資が下りやすいかどうかを決める、期限の利益喪失(返済期日によらず借金の一括返済を迫られる)を定めた契約条項には要注意、といった具合。

不動産投資が成功するかどうかは「購入時にどれだけ手間をかけたか」の一点で決まるのです。

2019年の統計によれば、平均年収441万円、平均年収以上を稼ぐ人の割合(400万円~2500万円超)は、労働人口の45.76%。一方、本書で出されている情報によれば、不動産投資相談に訪れた人たちのうち、年収500万円以上の割合は9割以上で、まああたりまえながら比較的年収が高い層である。だがそういう人たちも、いつまでこの高収入を維持できるのか不安に感じ、アベノミクスで経済状況が良くなっていたころから、不動産投資相談をすすめていたのだろう。

この本によれば、不動産投資のうち、中古区分(マンションの一室など)の表面利回りは5〜6%、新築一棟は7〜9%とのこと。ただしここから各種管理費や税金が引かれるから、手元に残るお金はもっと少ない。一方、不動産業者の手数料は中古なら売却金額の3%程度、新築なら15%になる(2016年当時)などという話を聞けば、とっても真剣に不動産業者選び、物件選び、銀行(貸出金利)選びをする気になること、間違いなし。

 

この本には面白い情報がさらりと載っている。2016年2月時点で、銀行の総資産に対する日銀当座預金を中心とした「現金預け金」の比率は、静岡のスルガ銀行が最も高かったというもの。マイナス金利のために日銀当座預金が多ければ多いほど損をする仕組みになったころだ。

スルガ銀行といえば、シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していた不動産会社スマートデイズの破綻をきっかけに、不動産投資にからむ不正融資が明らかになり、2018年10月に一部業務停止命令を受けている。現金預け金比率が高いゆえ、とにかく貸し出したいと焦ったためであろうと言われている。2016年2月時点の現金預け金比率1位というデータは、スルガ銀行にとっては不気味な予言になってしまった。この本では触れられていないが、不動産投資では、融資を受ける銀行にも用心しなければならないのだろう。