コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

ビジネスパーソンなら一家に一冊〜のびきよ『現場のプロが教える!ネットワーク運用管理の教科書』

May_Roma(めいろま)さんがTwitterでおすすめしていたIT関連本。お恥ずかしい話、会社のIT担当ってそもそも何をしているんや? という疑問を解決するために役立つかと思ってパラパラめくってみたが、これ、感動的に分かりやすい。

タイトルの通り、ネットワーク運用管理のお仕事紹介と基本業務の説明なのだが、ITの専門家ではない私のような読者でも、日々の業務のあれこれ(と電話一本ですっとんできてくれたIT担当のデキるイケメンM氏)を思い起こして、なるほどあのときはああいう対応をしてくれたのかと深く納得。

少し前に、#本当にあったIT怖い話 というハッシュタグが流行った。Togetterにもまとめられているが、いやはや、現代のインフラたるITをここまで理解できていないのは、ブレーカーもアースもないまま電気回線を日常業務に使うようなもの、恐怖以外のなにものでもないことがよくわかる。

サーバ担当者が辞めるため、新卒で引き継ぎを任された→前任者「毎週月曜の朝イチにこのコマンドを入力してた」と教えられた内容が怖すぎる #本当にあったIT怖い話 - Togetter

 

本書ではネットワーク管理運用業務を「オペレーション」「構成管理」「障害監視」「性能管理」「技術調査」「切り分け」「原因調査」「対処」などに分けており、さらに実際に仕事をする観点から、定常業務や非定常業務、Q&A対応業務やトラブル対応業務それぞれに分けて説明しており、なんと仕事で気をつけるべきホウレンソウのコツや、ワークフローまでつけてくれている親切ぶり。

IT専門用語は登場するけれど、素人にも直感的にわかるようにイラスト入りで説明してくれている。ネットワーク構成によってどこで設定するのかが違うことを私は知らなかった。ツイストペアケーブルにはストレートケーブルクロスケーブルがあり、機器を接続できる制限長がせいぜい100mかそこらだとは知らなかった。スイッチ間でループが発生して永遠にまわりつづけたら、スイッチの許容量を越えてフレームを処理しきれなくなり、ほとんど通信できなくなる状態をブロードキャストストームということも知らなかった。新人社員や掃除のおばちゃんが滅茶苦茶に接続したIT機器を前に、担当者が青ざめる顔が目に浮かぶ。

例えば、通信できないためスイッチを見てみると近くに接続されていないケーブルがある、通信できるようになるかもしれないと思ってとりあえずスイッチに挿してみる、これだけでループが発生し、最悪のケースではループを発生させた近辺だけではなく、全ネットワークが停止します。これは少しネットワークが分かっている人は行いませんが、たくさんの人が使うネットワークでは非常に多くあるトラブルです。

日々業務で入出力するデータだけではなく、ネットワーク自体の問題検出のためにさまざまな情報がやりとりされる仕組み、構造、プロトコル。データ送受信の自動最適化。機器間接続設定がちがっていたり、デフォルト設定や暗黙の処理設定がちがっていたりするとネットワークがうまく働かないこと。どれも今言われてみればあのトラブルの原因はこれだったかも!と納得するものばかり。

現場のプロだけあり、「こういうことがよく起こりますよ」という事例が豊富。私自身がネットワーク運用管理者として働く機会はないかもしれないけれど、今度会社でパソコントラブルが起きたときに、IT担当者の説明と対応を理解するために、一読するには最適。