英語の本365冊読破にチャレンジ。原則としてページ数は最低50頁程度、ジャンルはなんでもOK、最後まできちんと読み通すのがルール。期限は2027年10月。20,000単語以上(現地大卒程度)の語彙獲得と文章力獲得をめざします。
この本は多読乱読した育児本のうちの1冊。邦題は『しあわせ育児の脳科学』。
なぜこの本を読むことにしたか
なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。
①世界の見方を根底からひっくり返す書物、
②世界の見方の解像度をあげる書物、
③好きだから読む書物
この本は①。ベストセラー『ファクトフルネス』にあるように、ほとんどの人間は生まれながら心理的特性、思考方法の偏り、いわゆるバイアスやヒューリスティックをもつというのが心理学分野の通説であり(OSにデフォルトで搭載される情報処理アプリの「くせ」のようなもん)、そのような特性を理解していれば対人関係におおいに役立つ。
本書の位置付け
本書は、子どもによくみられる言動を、脳科学や発達心理学の知見をもとに説明しようと試みている。 子どもの脳は発達段階であり、成熟した大人の脳とは異なる特性をもつ。この本は子どもの脳の特性を説明し、それぞれの段階の子どもにもっとも適切な接し方を提案している。脳科学についての基礎知識はある程度説明されるし、難しいところにはあまり踏みこまないため、予備知識なしでもすらすら読める。
本書で述べていること
脳の働きにとって一番大切なのは "Integration" (統合) である。さまざまな機能が統合されることで脳はうまく働くことができる。(逆にそれができなくなるのが〈統合失調症〉というわけ)。
およそ100億の神経細胞からなり、それぞれの神経細胞がおよそ10000の「繋がり」をもつこの臓器は、成長とともにーー年老いたあとでさえーー物理的に変化し続ける。神経細胞は繋がりあい、神経回路をつくり、より洗練した反応を返せるよう進化し続ける。
われわれの脳を物理的につくりかえるのは、われわれの経験である。本書ではさまざまな実例とともに、どのような経験が子どもの脳のどのような「繋がり」をつくるのか、また子どもの一見幼い言動はどのような脳の「繋がり」が(あるいは「繋がり」が未発達であることが)原因と考えられるか説明する。
感想いろいろ
"Survive and Thrive" (生き残り、繁栄する) という本書冒頭のフレーズが気に入った。子どもの脳の仕組みはわからなくても、子どもにうまく語りかけるやり方はいろいろ経験知が蓄積されていると思うけれど、これを脳科学から証明された感じ。子どもを育てる=脳を育てるという一面があるのは否定できない。
ベストセラー "How to Talk So Kids Will Listen & Listen So Kids Will Talk" は「子どもは正しく感じれば正しく行動できる。そのためにはまず、子どもの感じ方を親が否定せず受けとめてあげる必要がある。さもなければ子どもは『自分の感じ方は信用できない』と学習してしまい、混乱し、怒りだすだろう」という考え方を示すが、これがまさに「右脳が司る感情の塊を、左脳が司る言語化能力で言語化することで、繋がりができ、筋道立てて考えられるようになる」やり方が阻害されないようにするものだ。
本書では、豊富な実例とともに子どもへの声掛けのやり方(たとえば子どもの感情を受け止めるやり方として、①子どもの言うことにちゃんと注意を払う、②相槌を打つ、③子どもの感情に名前をつけ、言葉で表現してあげる、④子どものやりたいことが成就したふりをして空想につきあう)を説明している。ちなみに子どもに何かをやらせたりやめさせるための5つのルールが紹介されており、個人的にはこれが一番役立ちそう。
1. Describe. Describe what you see or describe the problem. (見たものや起こりうる問題を述べる: 「ベッドに濡れタオルがあるね…」)
2. Give information. (情報を与える: 「ごらんなさい、シーツが濡れたよ」)
3. Say it with a word. (短い言葉にする: 「タオル!」)
4. Talk about your feelings. (親がどう感じたか話す: 「私は濡れたベッドでは眠りたくないよ」)
5. Write a note. (メモを残す: 「ありがとう!」)
子どもへの接し方を脳科学分野から説明している本として『セルフドリブン・チャイルド』は秀逸。
子どもに必要なのは罰則ではなくお手本をみせてやることだと述べた『子どもは罰から学ばない』も良書。読書感想をおいておく。
子どものやることに腹立たしい思いをするとき、実は自分自身がしたかったのにできなかったことを思い起こしているせいかもしれない、という鋭い指摘を提起した良書『自分の親に読んでほしかった本』も。