2018-01-01から1年間の記事一覧
悲しみながらもぞっとする結末。「弥栄」とはますます栄えるという意味だが、全部読み終わったあとにこのタイトルを見ると、ブラックジョークに見える。 本書は八咫烏シリーズの六作目にして、第一部完結篇。舞台は八咫烏が支配する山内と人間界とを行き来す…
ぜひ読んでほしい一冊。 著者は中国籍の女性経済学者、ジャーナリスト。中国国内で政治的に敏感な話題に踏みこむ言論活動を貫いたため、国家安全当局による常時監視、尾行、強制家宅捜査をはじめとするさまざまな圧力を受け、二〇〇一年に中国を脱出してアメ…
本作の主題はきっとこれ。 「絶対者が定めた、逆らえば死罰が下る〈理〉に支配されながらどう生きるか」 私たちはさまざまな法規制や社会規則に縛られながら生きている。人間社会がうまく回るためにはルールが必要だからだ(殺人が犯罪にならない社会を想像…
小野不由美先生の十二国記シリーズはかねてより好きだ。 さまざまな人々が登場する群像劇だが、中心となるのは二人。そのうち中嶋陽子の物語は読破したものの、もうひとり、高里要の物語はきちんと読んでいなかった。 12月に入り、本編最終作となるはずの原…
八咫烏シリーズの五作目。舞台は八咫烏が支配する世界から人間界に移る。普通の人間である志帆が、山内村に住まう伯父を訪ねるところから物語は始まる。 村総出で歓迎された志帆だったが、伯父が志帆を呼び戻したのは、山神の生贄にするためだった。なすすべ…
いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人が選ぶ極上の犯罪小説《熊と踊れ》を読んでみた。 極上の犯罪小説『熊と踊れ』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる この本はただ…
The Order of Time 作者:Rovelli, Carlo 発売日: 2018/05/08 メディア: ハードカバー 【読む前と読んだあとで変わったこと】時間というもっとも身近でありながらもっとも謎めいた存在についての新しい視点をふんだんに提供し、知的好奇心を刺激しまくってく…
この本を読みながら、初めて体験する感覚にとまどっていた。「あれ、私もうコレやってるわ」「私もうコレ知ってるわ」という感覚。 すべての仕事は必ずやり直しになること。 どうせやり直しになるのだから細かいことはおいておき、まず全体像を描くほうがい…
Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis 作者: J. D. Vance 出版社/メーカー: William Collins 発売日: 2016/08/06 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち 作…
エンロン。アメリカのエネルギー会社であり、2001年に当時最大の簿外債務隠蔽が明るみに出て倒産したことで、コーポレートガバナンスで必ず話題に出るようになった会社。この会社で起こったことを、十数年間の国際金融経験があり、のちに小説家に転身した著…
最近話題にする機会があったのだが、組織人の行動は、システムによって大きく変わる。 たとえば大学教授の評価方法に論文投稿数を取り入れれば、大学教授は一論文あたりの内容を薄くしてでも投稿数を増やそうとし、結果、論文の質が下がるだろう。博士課程修…
2010年3月上旬、某大手出版社が「早期退職優遇措置」(いわゆるリストラ)を発表した。そんな中早々に退職を決めた「たぬきち」が、退職まてまの2ヶ月をブログで実況してゆく。それをまとめたのが本書だ。 主人公(?)のブロガー「たぬきち」は45歳、男、営…
Shaping the Fourth Industrial Revolution 作者: Klaus Schwab,Nicholas Davis,Satya Nadella 出版社/メーカー: World Economic Forum 発売日: 2018/01/11 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 人工知能が人間社会をどう変えるか、さまざ…
「怖い絵」シリーズの著者が、絵画を軸に近代史を紹介する本。テーマがちがうため「怖い絵」シリーズのような意外性や物語性があるわけではないが、近代史の軽い読み物にはぴったり。 かつて絵画は王侯貴族のためのものであり、神話や聖書物語や教養がふんだ…
想像できるだろうか? 目に見えないながらもっとも種類が多い微生物の存在を。 1500年かかって重さ100トンまで成長したキノコの菌糸を。 深度10000メートルのマリアナ海溝の底に生きる細菌を。 本書はそんな微生物を、小さくて「見えない」けれども地球生物…
リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで (ハヤカワ文庫 NF 363 〈数理を愉しむ〉シリーズ) (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) 作者:ゲルト・ギーゲレンツァー 発売日: 2010/02/10 メディア: 文庫 【読む前と読んだあとで変わ…
いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で紹介されたスゴ本『土木と文明』を読んでみた。 『土木と文明』はスゴ本: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる 現代日本において、土木は…
久しぶりに漫画を。 最近世間を騒がせている地面師とはなんぞや? という疑問は、ナニワ金融道の1巻でさっそく解消された。本来の地主になりすまして土地を利用して利益を得ること(作中では土地を借金抵当に入れていた)を地面師と呼ぶ。作中では土地登録…
日本語に、主に漢文由来の文章的表現や、くだけた口語表現とがあるように、英語にはラテン語由来の難しい単語や、ふだん使うやさしい単語とがある。この本はふだん使う英語表現の中から、人生、動植物、色彩、数字などのテーマごとに面白い表現を集めたもの…
《怖い絵》シリーズで人気の中野京子さんは、これまで「絵は見て感じるもの」と言われてきた絵画に、時代背景、画家の思い、歴史事情などの知識を加えることで、より楽しむことができると教えてくれた。 以前、私はブログにこう書いた。だがそれだけではなか…
金融システムの中枢として銀行が据えられているけれど、それ、過去はそうだったけど、今でも本当? そう問いかけたくさせる本。 この本は見開き2ページで1つの金融トピックを図解入りで説明しており、簡潔で要点を押さえていてわかりやすい。 一方で、銀行…
いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」で紹介されたスゴ本《オープン・シティ》を読んでみた。 信頼できない読み手にさせる『オープン・シティ』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んで…
孔子の「論語」を読んでいく。今回読むのは《子路篇》、孔子の弟子である子路が、孔子との対話をまとめた部分。その中で心に残ったものをいくつかブログに書きとめる。この篇では孔子の理想主義者なところがとてもよく出ている。 13·3 ......名不正则言不顺…
孔子の「論語」を読んでいこうと思ったのは一年前だったが、全20篇のうち2篇読んだだけで止まってしまった。ようやく再開しよう。 今回読むのは《為政篇》、政治について孔子が考えたことをまとめた部分だ。その中で心に残ったものをいくつかブログに書きと…
《怖い絵》シリーズで人気の中野京子さんは、これまで「絵は見て感じるもの」と言われてきた絵画に、時代背景、画家の思い、歴史事情などの知識を加えることで、より楽しむことができると教えてくれた。 《怖い絵》シリーズでとりあげられる絵は見た目が怖い…
聖書とともに西洋社会の二大精神支柱と呼ばれるギリシア神話だが、さまざまな物語が口伝で伝えられてきたため、内容にまとまりがなかったり違う物語が流通したりする。本書はギリシア神話の一般的な内容をまとめたもので、入門書としてさっと読むにはぴった…
著者が慶應丸の内シティキャンパスで行なった講義をまとめた本書は、目からうろこの宗教知識が盛りだくさんで、西洋社会だけではなく、インド、中国、さらには日本の宗教を理解するうえでのお役立ち情報満載。 世界史知識として、西洋社会がキリスト教の上に…
《資治通鑑》。全294卷、約1300年にわたる中国の歴史を記録したものであり、権謀術数渦巻く宮廷権力闘争を学ぶには最適だと毛沢東も愛読していた。 あまりにも長編ゆえ、気がむいたときに少しずつ読んでいく。順不同で興味が向いたところを読んでいくつもり…
歴史は繰り返すといわれるように、ある国家の現在を理解し、未来を予測しようとするならば、その国家が過去歩んできた歴史をひもとくのが近道である。 アメリカとの熾烈な貿易戦争で注目を集めている中国だが、この先どうなるのか、さまざまな憶測が飛び交っ…
少し長い前置きになるが、私がインターネットを通したビジネスに本気で興味をもったのは、勤務先 (日系企業) での会議がきっかけだった。 その会議で、「重要な設計図の内容にリスクがある。プロジェクト全体に影響するかもしれない。リスク管理をどうお考え…