コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

タイトルがブラックジョークにしか見えない『弥栄の烏』

悲しみながらもぞっとする結末。「弥栄」とはますます栄えるという意味だが、全部読み終わったあとにこのタイトルを見ると、ブラックジョークに見える。 本書は八咫烏シリーズの六作目にして、第一部完結篇。舞台は八咫烏が支配する山内と人間界とを行き来す…

現代中国を理解するための良書『中国2017』

ぜひ読んでほしい一冊。 著者は中国籍の女性経済学者、ジャーナリスト。中国国内で政治的に敏感な話題に踏みこむ言論活動を貫いたため、国家安全当局による常時監視、尾行、強制家宅捜査をはじめとするさまざまな圧力を受け、二〇〇一年に中国を脱出してアメ…

ルールの抜け穴に落ちたとき『黄昏の岸 暁の天』

本作の主題はきっとこれ。 「絶対者が定めた、逆らえば死罰が下る〈理〉に支配されながらどう生きるか」 私たちはさまざまな法規制や社会規則に縛られながら生きている。人間社会がうまく回るためにはルールが必要だからだ(殺人が犯罪にならない社会を想像…

少年の成長する音『風の海 迷宮の岸』

小野不由美先生の十二国記シリーズはかねてより好きだ。 さまざまな人々が登場する群像劇だが、中心となるのは二人。そのうち中嶋陽子の物語は読破したものの、もうひとり、高里要の物語はきちんと読んでいなかった。 12月に入り、本編最終作となるはずの原…

神の世界に迷いこんだ人間『玉依姫』

八咫烏シリーズの五作目。舞台は八咫烏が支配する世界から人間界に移る。普通の人間である志帆が、山内村に住まう伯父を訪ねるところから物語は始まる。 村総出で歓迎された志帆だったが、伯父が志帆を呼び戻したのは、山神の生贄にするためだった。なすすべ…

兄と、弟と、父親の陰《熊と踊れ》

いつも参考にさせていただいているブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」の中の人が選ぶ極上の犯罪小説《熊と踊れ》を読んでみた。 極上の犯罪小説『熊と踊れ』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる この本はただ…

【おすすめ】時間というものの神秘『The Order of Time』

The Order of Time 作者:Rovelli, Carlo 発売日: 2018/05/08 メディア: ハードカバー 【読む前と読んだあとで変わったこと】時間というもっとも身近でありながらもっとも謎めいた存在についての新しい視点をふんだんに提供し、知的好奇心を刺激しまくってく…

なぜと聞かれても困る『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』

この本を読みながら、初めて体験する感覚にとまどっていた。「あれ、私もうコレやってるわ」「私もうコレ知ってるわ」という感覚。 すべての仕事は必ずやり直しになること。 どうせやり直しになるのだから細かいことはおいておき、まず全体像を描くほうがい…