コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

2020-01-01から1年間の記事一覧

子どもと話すことは学ぶべきスキルである〜アデル・フェイバ&エレイン・マズリッシュ『子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方大全』

子どもとの話し方、子どもの話の聴き方は、努力して身につけるべきスキルだ。 それが著者の教えである。 私たちはつい、大人に話すのと同じように子どもに話そうとしたり、子どもに話してほしいと期待したりするけれど、子どもはそもそも気持ちをうまく言葉…

タイトルからすでに親にとってはどこか他人事〜押川剛『「子供を殺してください」という親たち』

「子供を殺してください」 って、民間移送業者(病識がないため医療機関に行きたがらない精神障害者を病院につれていくお仕事)を前にして口走るか? タイトルを見た第一反応はこれ。 読み進めるにつれて、こういう言葉を口走るほど、当事者が追いつめられて…

あなたが知っているつもりになっていることは、実は……〜S.スローマン&F.ファーンバック『知ってるつもり 無知の科学』

この本の冒頭にはどきりとさせられた。1954年に起こったアメリカの水爆実験による第五福竜丸の被曝と、このことがきっかけで死亡した久保山愛吉さんの事例から、本書はスタートしたのだ。そして、第五福竜丸や、水爆実験場付近の環礁に住んでいた人々が被爆…

あなたの知らない平安時代へようこそ〜山本淳子『平安人の心で「源氏物語」を読む』

私が初めて『源氏物語』にふれたのは、記憶もおぼろげなむかしのこと、おそらく小学校低学年頃。たまたま手にとった本にあった、よくわからない言葉(おそらく古文原文)につづく一節。古文にふれたのもこの時が最初だった。当時は「なにこれ呪文?日本語?…

常識を捨ててただ信じよう、そうすればそれ以上のものを得られるだろう〜ジョージ・ジョンソン『量子コンピュータとは何か』

私は大学で量子化学を学ぼうとしたが数ヶ月で投げ出した。わけがわからなすぎる。すべては数学や数式の世界で、直感的に理解できることはひとつもでてこない。 「物質は波である」 「原子がどこにあるのか、どういう動きをしているのか、この二つを同時に知…

ワクチン反対派はなぜ生まれたか〜P.オフィット『反ワクチン運動の真実: 死に至る選択』

反ワクチン運動の真実: 死に至る選択 作者:ポール オフィット 発売日: 2018/05/08 メディア: 単行本 私はワクチン賛成派だ。ワクチンに限らずすべての医薬品は副作用を引き起こすリスクがあることを承知したうえで、麻疹や風疹や破傷風や狂犬病で死ぬくらい…

信じていたものが根底から塗り変わる瞬間〜フラナリー・オコナー《フラナリー・オコナー全短篇(上)(下)》

フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫) 作者:フラナリー オコナー 発売日: 2009/03/10 メディア: 文庫 フラナリー・オコナー全短篇〈下〉 (ちくま文庫) 作者:フラナリー オコナー 発売日: 2009/04/08 メディア: 文庫 尊敬するブログ「わたしの知ら…

極限状況でも人間らしくあってほしいと願う〜ジョージ秋山『アシュラ』

アシュラ 大合本 全3巻収録 作者:ジョージ秋山 発売日: 2018/07/06 メディア: Kindle版 最初の1ページで逃げ出したくなり、最後の1ページまで目を離すことができなかった。 見開きで、泣き叫ぶ子どもの尻に男がかじりつき、肉を噛みちぎって喰おうとする。…

まことの愛を欲しながら金しかさしだせない銭ゲバ〜ジョージ秋山『銭ゲバ』

銭ゲバ 大合本 全4巻収録 作者:ジョージ秋山 発売日: 2018/07/06 メディア: Kindle版 ジョージ秋山の問題作『銭ゲバ』を一気読み。 『銭ゲバ』は、土砂降りの中、死体の手が土から突き出ているところから、主人公である蒲郡風太郎が這うようにして逃げる場面…

【おすすめ】華やかに、挽歌として〜山本淳子『枕草子のたくらみ』

枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い (朝日選書) 作者:山本淳子 発売日: 2017/04/10 メディア: 単行本 私がこれで読んできた中でもっともわかりやすく、もっとも人間味にあふれ、もっとも平安時代の人々の考えに寄り添った解説書。『枕草子』…

テーマのある旅に出よう〜成瀬勇輝『自分の仕事をつくる旅』

たまには旅行記を。 この本はただの旅行記ではなく、「自分」という個人商店で売ることができるものを仕入れるという明確な目的を持った「テーマのある旅」の記録。売るものは形ある商品ではなく、誰かが「お金や時間を支払ってでも知りたい、読みたい」と思…

移民に呑みこまれた欧州、呑みこまれるかもしれない日本〜ダグラス・マレー『西洋の自死』

欧州は自死を遂げつつある。少なくとも欧州の指導者たちは、自死することを決意した。 … 私が「欧州は自死の過程にある」と言うのは…「私たちの知る欧州という文明が自死の過程にある」という意味である。英国であれ西欧の他のどの国であれ、その運命から逃…

GoogleとFacebookは私たちを変えているか?〜デイヴィッド・サンプター『アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか?』

だれもが一度は聞いたことがあると思う。Googleの検索結果が偏っているとか、Facebookでフェイクニュースが拡散して世論に影響しているとかいう話だ。それをまじめに考えてみたのが応用数学教授であるこの本の著者だ。 本書は18の章立てになっており、まとめ…

ビジネスパーソンなら一家に一冊〜のびきよ『現場のプロが教える!ネットワーク運用管理の教科書』

May_Roma(めいろま)さんがTwitterでおすすめしていたIT関連本。お恥ずかしい話、会社のIT担当ってそもそも何をしているんや? という疑問を解決するために役立つかと思ってパラパラめくってみたが、これ、感動的に分かりやすい。 タイトルの通り、ネットワ…

怒らないような人格に達するまでの遠い道程を迷わないために〜アルボムッレ・スマナサーラ『怒らないこと』

怒りについての読書、第二弾。 これも尊敬するブログ「わたしの知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」から。著者はスリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老であり、日本において仏教伝導を行なってきている。 「怒らないこと」はスゴ本: わたし…

生物種保護の試み自体が生物種を変える〜M.R.オコナー『絶滅できない動物たち』

人間の活動によってもたらされる環境破壊は無視できないものであり、なかでも生物種の絶滅は深刻な問題である。パンダもサイも虎も象も、ほうっておけばこの地球上から永遠に消え去ってしまう。だから人類はこれ以上生物が絶滅しないよう、保護しなければな…

もしもあなたが怒りたくないと感じるならば読んでみよう〜セネカ《怒りについて》

怒りについて 他2篇 (岩波文庫) 作者:セネカ,兼利 琢也 発売日: 2018/04/19 メディア: Kindle版 私は自分自身の問題を解決するためにさまざまな本を読んできたけれど、なかでも大きな問題は【親との関係】【自分自身の怒り】であった。【親との関係】につい…

【おすすめ】最後まで読むには勇気がいる〜トルストイ《イワン・イリイチの死》

尊敬するブログ「わたしの知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」でみつけて手に取った本。 人により猛毒「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる イワン・イリイチの死/クロイツェル・…

【おすすめ】あなたが思うほど現実は悪くない〜ハンス・ロスリング《ファクトフルネス》

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 作者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド 発売日: 2019/01/11 メディア: 単行本 Factfulness: Ten Reasons We're Wrong About…

教訓が風化しないことを願って〜羽根田治『山岳遭難の教訓』

私は以前山好きの知りあいに初心者向けの夏山に連れていってもらったことがあるが、「当日の降水確率が30%以上なら中止」といわれた。その時は慎重すぎると若干不満だったものの、さいわい当日は天気にめぐまれた。 登山ではどれだけ天候に気をつけても慎重…

山岳文学の珠玉〜萩原浩司『写真で読む山の名著』

登山、自然、歴史などにまつわる名著を出し続けているヤマケイ文庫から編集長自ら「山好きな方なら最低限知っておいてほしい」と思う17冊を厳選し、写真付きで紹介したのが本書。巻末に33冊のヤマケイ文庫紹介がおまけされ、全部で50冊の文庫紹介となる。 孤…

【おすすめ】暴力によって格差が縮まるという不都合な真実〜ウォルター・シャイデル『暴力と不平等の人類史』

The Great Leveler: Violence and the History of Inequality from the Stone Age to the Twenty-First Century (The Princeton Economic History of the Western World) 作者:Scheidel, Walter 発売日: 2017/01/24 メディア: ハードカバー 暴力と不平等の人…

[昔読んだ本たち]少女小説(女性向けラノベ)編

昔読んだことがある少女小説(女性向けラノベ)を思い出していく。一時期毎日のように読んでいて、気に入ったものはいまでも大切に保管している。 月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫) 作者:小野 不由美 発売日: 2012/06/27 メディア: 文庫 神。いくら…

イギリスの幽霊譚でアフタヌーンティーを〜Charles River Editors “Ghost Tales of the United Kingdom: Historic Hauntings and Supernatural Stories from the UK”

幽霊屋敷、呪われた教会、イギリスの「呪われた場所」をカラー写真入りで紹介する本。 私は幽霊や超常現象などはあまり信じていないけれど、たまに息抜きでこういう怪談話を読んでみるのは嫌いではない。ただし『リング』やら『着信アリ』やらの精神的にくる…

株式市場での栄光と破滅と、また栄光〜ニコラス・ダーバス『私は株で200万ドル儲けた』

1950年代、あるダンサーの個人投資家が株式トレードで200万ドル儲けた。彼は自分自身の株式投資のやり方や、200万ドル儲けるまでのできごとを本にまとめた。それが本書である。 本書は、株式投資の教科書として広く読まれているというけれど、私が読んだとこ…

不動産投資もひとつの選択肢、かもしれない〜稲垣浩之『不動産投資専門税理士が明かす 金持ち大家さんが買う物件 買わない物件』

新型コロナウイルス感染爆発のために世界規模で経済状況が悪化しており、日本国内でも休業・廃業が相次いでいる。わが家もいつ不況の大波をかぶって給与カットされるかわからないため、ここしばらく投資関係の本に手がのびている。 本書はタイトルの通り、不…

【おすすめ】歴史好き必読のスペースオペラ〜田中芳樹『銀河英雄伝説』

銀河英雄伝説全15巻BOXセット (創元SF文庫) 作者:田中芳樹 発売日: 2017/10/12 メディア: 文庫 【読む前と読んだあとで変わったこと】 専制政治と民主共和制度のそれぞれのメリット、デメリットについて深く考えるきっかけとなった。 現代社会であたりまえに…

本書を読まずして投資をすることなかれ〜J. D. シュワッガー『マーケットの魔術師』

マーケットの魔術師 作者:ジャック·D シュワッガー,横山 直树 発売日: 2012/03/09 メディア: Kindle版 【2020.3 再読】 本書は2年前に一度読んだが、そのときは投資について真剣に考えているわけではなかったので、流し読みですませた。 それから2年、本腰…

中国人と中国文化の宿痾のありかを心理学観点から(恐る恐る)さぐってみた〜武志紅『巨嬰国』

巨嬰、という単語が中国語にある。 意味は字面のごとく「巨大な赤ちゃん」、日本語でいうところの「見た目は大人、頭脳は子供」を指す単語だ。 この本の著者は、この単語からスタートして、現代中国社会にひそむ心理的問題を説明しようと試みている。 …と言…

育児についての読者質問に答えます〜佐々木正美『続 子どもへのまなざし』

『子どもへのまなざし』の続編。『子どもへのまなざし』を読んだ読者からの質問に、著者が丁寧にじっくりと答えていくスタイル。基本的なメッセージは『子どもへのまなざし』とほぼ同じだけれど、質問内容によって整理されている感じ。たとえばこういったこ…