コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

20世紀中国の「勝ち組」と「負け組」〜余華『兄弟』

書店で余華(ユイ・ホア)の代表作のひとつ『兄弟』が復刊されているのを見かけた。我が家の本棚にもかなり前に買った『兄弟』があるけれど、積読状態だったため、この機に読んでみた。 ノーベル文学賞受賞作家である莫言(モー・イエン/ばく・げん)が心理…

リアルな出来事に芸術的視点をまぶした印象派絵画のような小説〜莫言『赤い高粱』『続・赤い高粱』

莫言(ばく・げん/モー・イエン)は2012年にノーベル文学賞を受賞した中国人作家。幼少期は1500万~4000万の餓死者が出たとされる大躍進期(*1)にあたり、その後文化大革命(*2) を経験する。この経験が彼の創作の原動力となっている。ノーベル文学賞を受賞し…

【おすすめ】ワクチン開発競争と政治の壮大な駆け引き〜メレディス・ワットマン『ワクチン・レース』

ワクチン・レース 作者:メレディス・ワッドマン,佐藤由樹子 羊土社 Amazon 本書は1964年から65年にかけてアメリカで起こった風疹の大流行と、その後に続く風疹ワクチン開発についてのノンフィクション。 風疹は感染症の一種で、発熱、発疹、リンパ節の腫れな…

【おすすめ】2008年金融危機、なぜリーマンは救済されなかったか〜A.S.Sorkin “ Too Big to Fail”

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。 ①世界の見方を根底からひっくり返す書物、 ②世界の見方の解像度をあげる書物、 ③好きだから読む書物 この本は②。米ニューヨーク・タイムズで金融と企業合併を専門とする敏腕記者が、約500時間のインタビュー…

苦労や工夫を重ねて生きていたあの頃〜暮しの手帖社『戦争中の暮しの記録』

戦争中の暮しの記録―保存版 暮しの手帖社 Amazon 小学6年生だったとき、学級文庫になぜかこの本があった。戦争など露ほども知らない世代だが、好奇心にかられてよくめくっていた。記憶にあるのは「主食代わりに配給されたコッペパン」「配給の塩が足りない…

新本格ミステリーにようこそ〜知念実希人『仮面病棟』『時限病棟』『硝子の塔の殺人』

コロナ禍のさなか、Twitterで積極的に情報発信したり、ワクチン接種出来るところを紹介したりと、精力的に活動している知念実希人先生を知った。小学館が出した、コロナに関する不適切な雑誌記事をきっかけに小説作品を引き上げるという、医師としての矜持、…

子どもを国際人に育てるために〜谷本真由美『みにろま君とサバイバル 世界の子どもと教育の実態を日本人は何も知らない』

みにろま君とサバイバル 世界の子どもと教育の実態を日本人は何も知らない (集英社学芸単行本) 作者:谷本真由美 集英社 Amazon イギリス在住、IT業界で働く谷本真由美さん(めいろま@May_Roma)のツイートはいつも興味深く読んでいる。基本的にビジネス環境…