コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

いま、若いお母さんたちに言いたいこと (田中澄江著)

これは著者が七年間教育委員として教育現場に触れてきた中で抱いた切実な感想であり、意見をまとめた一冊だ。著者は子どもが帰ってきたときにお母さんがいない家よりも、たとえ稼ぎが少なくともお母さんが家にいる方がいい、成績だけでなく子どもの心の成長にもっと注意を向けてほしい、子どもなりの誇りを育ててほしい、善いものや悪いものは学校に頼るのではなく家庭で子どもに教えてあげてほしい、と切々と訴えている。

突きつめれば、自尊心と道徳心を教えてあげてほしいということだと思う。このことには心から賛成する。

逆に言うとこれができていない家庭がそれだけ多いのだろう。この本が書かれたのは1993年。2017年の今、著者はすでに亡くなっているが、モンスターペアレントや少年犯罪がマスコミに登場することはますます増え、この問題がまだまだ解決できていないことを思わせる。

一方で疑問もある。親は、自分がされてきた育て方で自分の子どもを育てるものなのだ。

今の親世代は、この本の著者からは孫世代にあたるだろう。著者の子ども世代が、今の親世代を育てた。その中にはモンスターペアレントもいた。さらにその子どもの中には少年犯罪に走る者もいた。

このことを、今の若い者はなっとらんなどという論調で説明できるか、私は大いに怪しいと思う。モンスターペアレントは、そのようにふるまう親に育てられたのではないか。祖父母は? 曾祖父母は? 著者はたまたまお母様から行き届いたしつけを受けたが、そうでなかった者は?

結局昔も今も、しつけをよくする親もいればそうでない親もいたのだろう。かつては隣人や地域社会がある程度子どもを叱って軌道修正してくれたが、それがなくなってきた今、親が子どもをしつける能力には差があることが、しだいに明るみに出てきた。そういう可能性はないだろうか。