コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

外資系の交渉術 -思いどおりの結果を得る6つのメソッド (岩城徹也著)

 

外資系の交渉術―――思いとおりの結果を得る6つのメソッド

外資系の交渉術―――思いとおりの結果を得る6つのメソッド

 

 

交渉力は外資系企業に勤める人間にとって、もっとも欠かすことができないスキルだと著者は断言している。

外資系企業では経営者と社員すべての間に、あるいは彼らが従事する日々の仕事すべてに「契約」という考えが根付いている。求められるレベルを達することは、目標ではなく会社との「契約」であり、できなかった社員には容赦ない評価が下る。そして求められるレベルに達するには、交渉力が最大の武器だと著者は言う。

このように考えるのは、著者が営業職であることと無関係ではないだろう。私としてはさまざまな職種、例えばアナリストやトレーダーも同意見なのか知りたいところだが、それは残念ながらこの本にはない。

「交渉」といえば駆け引きを連想するが、著者はそうではないという。相手の心理を理解しながら行うコミュニケーションだ。一番重要なのは相手が「自分のメリットになることを自分で選んだ」と感じるようもっていくこと。押しつけられるものを人は好まず、自分で選んだことを好むからだ。

 

(2018/03/19 追記)

改めて読んでみると、外資系企業だけに限らず、あらゆる場面で使える交渉術のノウハウがふんだんに盛りこまれている。たとえばこのようなものだ。

交渉では「相手に勝ったと思わせて、実は自分が勝っている」状態をつくり出すことが本当の勝利と言えます。

相手に自分自身のニーズに気づいてもらう示唆質問や解決質問はいつどのタイミングで行なえばよいのでしょうか。それは、相手が自分たちの課題を語り始めたあとです。

一方で、この本を読んでいると、どことなく決まりの悪さを感じる。

おそらく「いかに料金の話をせずに交渉をまとめる方に力を集中させるか」ということを強調しすぎているのが原因だろう。外資系企業では「料金の話は最後までしてはならない、お客様に自分自身の課題とその解決策、我々が提案していることの価値に気づかせてからでなければならない」というやり方をしている。それ自体はビジネスのやり方として理にかなっている。

だが、これが料金が高い外資系企業の立場から書かれると、「そんな風に高価なサービスを売ってきたのでは?」と連想してしまい、どうしても不信感に近い感情を抱いてしまう。

内容は素晴らしいのに、著者が意図しなかったであろう連想のせいで読みながら身構えてしまうのは、とてももったいないことだ。