コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ (岡嶋裕史著)

これは面白い。情報化社会の覇者たる三大企業が、クラウドにどう肉薄しようとしているのかを明快に書き分けている一冊。

マイクロソフトは、既存OSであるウィンドウズとその上で動くソフトの圧倒的な蓄積、対応技術者の蓄積こそが彼らの最大の資産だと理解している。ウィンドウズを基本OSとするコンピュータでこれまで業務をしてきた企業は、「従来通りのソフトが使えて操作性も変わらない」ことそのものに安心感を覚える。ゆえにマイクロソフトの戦略は、クラウド用のウィンドウズを作ることになる。

グーグルはハードウェアやクラウドなどどうでもいいと思っている。彼らの動機はただ一つ、「世界中に散らばる情報をすべて整理する」である。そんなグーグルにとって、個人用パソコンに分散保存された情報は取り出せないから整理分析できない。ならば情報をハードウェアではなくインターネット上に保存させるためにクラウドを利用させよう、というわけだ。

アップルは「顧客に最高の体験を」というのが社是だ。彼らはiTunesをつくり、インターネット上で楽曲などを購入、ダウンロードできる仕組みをつくり出した。さらにそれを発展させたのがiPhoneApp Storeだ。アップルがリリースするアプリだけでなく、個人開発者がアプリをリリースできるのが魅力的だった。iPhone上に随時アプリをインストールでき、要らなくなれば削除できる。まさにクラウド的スタイルだ。

三大企業がそれぞれの強みを発揮する点についての説明は、ビジネス書としても興味深い。もちろん彼らだけがプレイヤーではない。クラウド利用のルールをつくる熾烈な競争は始まったばかりで、今後も目が離せない。