この本はタイトルから伝え方のノウハウ本かと思ったが、それだけではなかった。「伝わる」ことについての現状やその原因、「伝わる」ためにはどのような手が打てるか、著者らの考えをまとめた一冊だ。
「伝わらない」という状況がどんどん増えているが、パソコンやメール、ソーシャルメディアの普及で、実際に声を出して話す機会、また上司や同僚の声を聞いて話し方を学ぶ機会が減り、会話の経験が不足しがちであることが原因だと著者らは訴える。
これは確かにその通りだと思う。オフィスはすっかり静かになった。時々違うオフィスに行き、そこがにぎやかであること、皆楽しそうに話していることに驚く。そこでの会話を聞いていると自然に今の状況がわかり、話し手のトーンでその人自身の意見もなんとなくつかめる。
「伝わる」ためには、声を出す環境を整えることが大切だと著者らは説く。たとえばメールをするのではなく電話をする、喫煙室でのコミュニケーションに加わる、紙の掲示板を復活させてその前で社員同士が話すきっかけを作る、など、とにかく「話す」ことが大切だ。にぎやかなオフィスなどは理想的だろう。