
異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養
- 作者: エリン・メイヤー,田岡恵,樋口武志
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2015/08/22
- メディア: 単行本
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読み始めてすぐに買ってよかった、もっと早く出会いたかったと思った書。著者はさまざまなできごとーー同僚をランチに誘うなどーーを示しながら、それが文化によってどのように理解されるかを示している。できごとはどれもささいなことで、ありふれているが、それに対する見方は文化によって驚くほど違う。
著者は文化的相違を八つの指標で評価できるとしている。それぞれの指標は次の通り。
①コミュニケーション: ローコンテクストvsハイコンテクスト
②評価: 直接的ネガティブフィードバックvs間接的なネガティブフィードバック
③説得: 原理優先vs応用優先
④リード: 平等主義vs階層主義
⑤決断: 合意思考vsトップダウン式
⑥信頼: タスクベースvs関係ベース
⑦見解の相違: 対立型vs対立回避型
⑧スケジューリング: 直線的な時間vs柔軟な時間
ある文化ではうまくいく方法は、違う文化では正反対の効果をもたらすかもしれない。私の知り合いのある中国人は、日本人が友達の家に遊びにいくのに、何日も前に予定を聞いて日程を決めることを理解しがたいと考えている。中国では友達がアポイントメントなしに突然自宅にやってくるのはごく普通のことで、仲がいい証拠なのだ。ところが日本でそんなことをしたらーー特に小さい子供がいる友人ならーー不躾と思われるだろう。
同じように、あらゆるものを明文化する習慣は、ローコンテクストな文化ではプロフェッショナリズムや透明性の証となるが、ハイコンテクストな文化では口頭でのやりとりに対する信頼の欠如に映ることがある。私はこの実例を目の前で見たことがある。ある日本人がイタリア人にやりとりの明文化を求めたところ、彼は自分が信頼されていないと思い、激しい反応を見せた。一般的にイタリア文化は日本文化よりもローコンテクストであるとみなされるにもかかわらず!
ポイントは、文化の違う人々の関係を測るときに重要なのは二つの文化の相対的位置関係であること、文化内にも許容範囲があり、個々人はその許容範囲内でふるまいを選ぶことだ。時には上の日本人やイタリア人のように例外もあるが。
ちなみに、アジアとヨーロッパでひとくくりにすることも効果的ではない。あるフランス、ドイツ、日本、中国の混合チームで、誰の間で最も深刻なコミュニケーション上の問題が起きたか? 日本人と中国人だ。
著者が作った日本のカルチャーマップは次のようになった。なかなか興味深い。
①ハイコンテクスト(文句なし)
②間接的なネガティブフィードバック(体育会系気質のブラック企業は例外)
③応用優先?(ここは意見が分かれそう)
④階層主義(最近は平等主義も増えてきたかも)
⑤合意志向(この本で日本の稟議システムが超合意主義の例として取り上げられているほど。ちなみにお隣中国はトップダウン式に分類されている。隣国なのに正反対だ)
⑥関係ベース(間違いない)
⑦対立回避型(またの名を引き延ばし型)
⑧直線的な時間 (すごく企画好きだ)