コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

30歳から読む論語 「自分磨き」のヒントが必ず見つかる!(中島孝志著)

論語本文を読むのもいいけれど、他人が論語をどう読んでいるのか知るのも面白いと思って選んだ本。著者は孔子のことを「この人と話をしていると、ものすごく得をした感じがする人」と言っており、論語を愛読している。

著者はビジネスマン、それもサラリーマンから独立起業まで経験した視点から、論語のうちいくつか言葉をピックアップし、それにあてはまる自分のビジネスマン経験を紹介している。言葉をたどるうちに、しだいに「確かにあの上司はこういうふうに振る舞うな」「あの時あの人が言ったのはこういうことか」と、自分の身近な人にあてはまることが見つかってきて、どんどん面白くなる。

たとえば著者は論語・子罕篇の「人間の真価というものは好調時にはわからない。苦境に立たされたときにどんな行動をとるか。それがわかるのだ」という言葉を引き、試練を嫌だと思わず絶好の修行のチャンスと考えれば、試練に取り組む姿勢が変わってくると書いている。姿勢が変わると行動が変わる。行動が変わる状況が少しずつ変わる。すると、いつのまにか風向きがいい方向に変わっている。

これを地で行っているのが、私が知るあるプロジェクトチームのリーダーであるSさんだ。苦しい交渉を強いられても、顧客が腹立たしいほどに身勝手でも、Sさんは皆の前では自制が行き届いた、前向きな姿勢で取り組んでいた。たまに自制に失敗していたから本来の気性はおそらくもっと激しいものだっただろうが、己を律し、試練を顧客の信頼と協力を得るチャンスと捉え、取り組む姿勢はみなが見ていた。そして、Sさんはやがて顧客の理解と協力を得ることに成功していった。