この本を読み進めていくと、著者は商店街活性化方法についてとことん考えて、実践して、成功と失敗を繰り返してきて、その経験をすべてこの本にメッセージとしてこめたのだと伝わってくる。
著者が考える商店街活性化はとてもシンプルだ。行きたくなるお店がそこにあればお客さんはくる。ただしそのお店がどの商店街にあるかはお客さんにとってはどうでもいい、だ。
電気街、中華街、歌舞伎町のように、商店街そのものが一つのテーマに沿ってつくられているのなら、そのテーマに興味をもつお客さんは商店街目当てで来るだろう。だが、そうでない普通の商店街は、「商店街」であることでお客さんを呼ぶことはできない。お客さんはあくまで「商店街の中のあるお店」目当てで来る。だからお客さんを呼べるお店に、商店街に来てもらわなければならない。それが著者の戦術だ。
著者はこれを四段階で実現させようとする。
- 商店街活性化のための組織を設置する。お客さんを呼べる新規店舗を誘致するという目的上、既存店舗の店主で構成する組合などからは独立した組織であるべき。(ちなみに新規店舗とするのは、そもそも既存店舗はお客さんを呼ぶ力が弱いから商店街が衰退しているのだし、集客力はすぐに変わるものではないから)
- イベントを行い、商店街への注目を集める。この時、注目してほしいのは新規のお客さんではないことに注意。注目してほしいのは、新規出店を考えている人、地域でなにかをしたい人、行政機関だ。そういう人々に「場」としての商店街をアピールする。
- 環境を整備し、新たな出店を誘導する。最重要項目だ。清掃や街灯、防犯カメラの設置など環境をよくすることや、不動産情報とのマッチング、賃料交渉支援など。
- イベントと出店誘導のサイクルを繰り返して、規模を大きくしていく。
この取組み自体はすばらしいし、商店街再生にかぎらず、他のところでも応用は効くだろう。
ただ、それとは別にどうしても疑問が湧く。
「このオンラインショッピング全盛期に、なぜ従来の商店街を持続させなければならない? 商店街自体が時代遅れではないか? 時代遅れになったものは消えゆく運命であり、無理やり繁栄させることもないのでは?」
そう思えてならない。
わたしは昭和生まれで商店街を使ったこともそれなりにあるとはいえ、商店街自体にノスタルジーは感じないし、商店街がなくなっても「じゃあ別のところに行くわ」としか感じない。著者はきっとそうではないのだろう。商店街再生にこれほど熱心に取り組んでいるのだから。著者にとってわたしのような人はおそらく商店街の見込み客ではないのだろう。
でも、この時代、わたしのように商店街に意味を見出せないデジタルネイティブは増える一方ではないだろうか。そんなことを考えながら、この本を閉じた。