コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

3年後、転職する人、起業する人、会社に残る人 (佐藤文男著)

著者はまだ転職が一般的でなかった90年代に転職と起業を両方経験している。今は人材紹介ビジネスを営み、転職希望者のサポートをしている。転職関連の本は毎年一冊ペースで10数冊出している。

これは私の持論だが、一人の著者が同一テーマで複数冊の本を書く場合、2冊も読めば十分で、それ以上読んでも同じことが繰り返されているだけと気づくことが多い。著者が伝えたい核心的メッセージは実はとてもシンプルで、それを手を替え品を替え繰り返しているだけだからだ。

この本もそんな感じがした。転職・起業・会社に残るにあたってそれぞれ心がけるべきことーー明らかに著者が職業柄語り慣れていることを繰り返している。ある程度理想論になっており、生々しさが欠けている。

私がそう感じたのは、インターネットでもっと生々しい起業体験を読むことができるからだ。私が繰り返し読んだのはニューアキンドセンターにある「起業失敗の話。起業を志す皆さんに敗残者からお伝えしたいこと」(https://new.akind.center/201704/fail-in-company/)だ。初っぱなから「人間は裏切りますし、裏切りが発生するのは全て代表取締役の責任です」と全力で現実で殴ってくる。こういう己の身を切るような文章に比べれば、本書の起業論で「起業で重要なのはリーダーシップと人望力です」と書いてあるのは、これほど血が通っているようには感じられなかった。

とはいえこの本から学ぶことは多々あり、転職にあたり、中長期的に、自分が転職先でどのように貢献できるかという予測を立てる。自分が 1年後、 3年後に会社にどんな成果をもたらすかイメージすることが大切だという指摘にははっとさせられた。転職そのものが目的化しがちだから、これは常に心がけるべきだと思う。