コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

Homesick (大沢昌治著)

週末は読書とジョギングだけしてすごすことに決めた。

この本は写真集だ。離婚後、世界一周の旅に出た著者が、さまざまな写真のあいまに旅先でのできごとを詩のようにゆったりとつづる。

写真の一枚一枚に解説があるわけではない。観光パンフレットに必ず載っているような遺跡の写真もあれば、名もなき市井の人々が笑顔を向けてくる写真、ちょっと白目をむいている女の子の写真…。読者は著者が今いるところから、その写真がなにを撮ったものなのか、どんな状況で撮ったものなのか想像するほかなく、そうしているうちに自分がその場にいるかのように錯覚しはじめる。

著者は必要以上に感想も述べないし、論評もしない。ただ淡々と旅先で感じたことをつづる。どのように感じるかはすべて読者に委ねられる。ポーランドで説明なしにいきなり挿し込まれた一枚の写真には、山のような毛?髪の毛?が写っている。これはアウシュビッツの犠牲者たちが残したものだろうか? イランで映されたのは血まみれの肉屋の店先だ。店主の老人が、おそらくつい先ほど羊の喉をかっさばいたばかりの、錆だらけの刀を握りしめている。匂いまでもが漂ってきそうだ。