100マイル(約160km)、アップダウン累計9600m、3つの国家にまたがり、走行時間20時間以上。
狂気の沙汰にも思える世界一過酷なトレイルランニングコースがモンブランにある。ここに来るトレイルランナーは生半可な覚悟と実力ではスタートラインにすら立てず、それぞれに決意を秘めている。
鏑木毅氏は日本国内トレイルランニングの第一人者で、ウルトラトレイル・モンブランで3位入賞を飾り、日本初の100マイルレース、ウルトラトレイル・マウントフジを立ち上げるなど多方面で活躍している。その彼がトレイルランニングの過酷さと魅力を実体験そのままに語ったのがこの本だ。特にレース中の過酷さは目を覆う。
蹴り出すたびに、そこから流れ出た血液がジャブジャブと脚のなかで滞留しているような感覚で、とてもこの世のものとは思えません。
しかし、すんでのところで私を支えてくれたのはこんな思いでした。
「カブラキツヨシたれ」
やりとげること、自分自身に勝つことがなによりの喜びなのだと鏑木毅氏は率直につづる。雄大なアルプスの中で、己の限界を超えていく。