コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

よりよい意思決定のために『Industry 4.0 for Process Safety』

人工知能やITの本を探していると、しばしばIndustie 4.0という単語にぶつかる。

「インダストリー4.0(Industrie 4.0)」と呼ばれるこの試みはドイツで進められている。第4の産業革命とも呼ばれる、工業のデジタル化によって製造業の様相を根本的に変え、製造コストを大幅に削減する試みだ。本書はそのうち、一般的に危険性が高いとされる工業プラントーー石油、ガス、化学プラントなどーーの安全管理にこの試みを適用すればどうなるかまとめたものだ。

 

工業プラントでのインダストリー4.0の意義について、本書はズバリ言い切っている。

Appropriately filtered data shown in an appropriate context led to better decisions.

ーー適切に取捨選択されたデータが、適切な形で示されることで、よりよい意思決定がなされる。

工業プラントともなれば膨大なデータが数限りないセンサーから中央制御室に送られる。これだけのデータを蓄積したり分析したりする能力のあるコンピュータはこれまで非常に高価だったが、現在ではは信じられないくらい安価で手に入るようになった。これらのデータを①うまく処理し、②重要なものを残し、③工業安全についてしっかりとした文化をもつ企業の適切な管理者に示されることで、④事故を未然に防ぐことができる、というわけである。

 

この本では深く踏みこまれてはいないが、さしずめ①②は将来的にはコンピュータと人工知能の仕事になり、人間はコンピュータが吐き出す、人間の脳で処理可能な量の情報を見て(1秒に100個も200個も数字を見せられれば誰だってパンクするが、コンピュータが情報処理して1個の代表値を出してくれればありがたい)、なにかおかしなところがないか判断するだけになるというのが理想形だろうか。

膨大なデータがある場合、問題になるのは常に「どのデータが重要か」だ。これをコンピュータがどう処理するのかが鍵となるはずだが、本書ではコンセプトにとどまり、どうすればうまく処理可能なのかは書かれていない。特徴量を抽出できるディープラーニングに頼るのだろうか。この辺りがいささか情報不足で、もっと調べたくなる。