コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

あなたはこれを読んでなにを思うだろうか?『日本が世界一「貧しい」国である件について』

日本人ならぜひ一度読んでみてほしい。あなたはなにを思うだろうか。反感を抱くだろうか、それとも考えこむだろうか?

この本でいう貧しさは物質的貧困ではない。精神的貧困である。

日本人は心が貧しい。これが著者の主張だ。では心が豊かとはどういうことだろう?

楽しみがある。小さなことで怒ったり落ちこんだりしない。他人のちょっとした失敗を責めずに「そんなこともあるさ」と気にかけない。人同士の違いに寛容である。「わたしはわたし。こういう人で、こういうことが好き」と自然体で認められる。こういうことが心の豊かさやゆとりだろう。

同調圧力。自尊心低い。わたしがこれまで外国籍の知人友人から言われた「日本人のここが理解できない」「人生を不幸にする」こととは真逆である。

 

本書はこの辺りを徹底的に掘り下げている。日本は経済的にはまだまだ豊かかもしれないけれど、心のあり方は余裕や遊びがなく、貧しく、自分で自分を不幸にしていると、日本社会に巣食う宿痾を指摘する。

著者はめいろま(めいろま@May_Roma)の名前でツイッターでは有名人であり、バックパッカー、国連職員、国際結婚などの豊富な海外体験をもとに「ここが変わらなければならないよ日本人」について発信し続けている。

彼女の本をこのところたて続けに読んでいるが(ブログにも記録しているがこれで4冊目)、読めば読むほど気分が晴れやかになってくるのは、自分自身を束縛していた見えない日本社会のしきたりや習慣に光をあて、正体を明かしてくれているためだろう。

たとえば主体性のなさ。これは明らかに学校教育で唯一の正答を教えてもらうこと、正答以外の答えや考えを否定されることを繰り返し訓練されてきたからだ。受け身があたりまえになり、教えてもらうことがあたりまえになり、間違っていたら教えた側の責任になる。恐ろしいほどの「わたしの考え」のなさは、根深いところで自尊心の低さにつながる。

コメントを飛ばしてくる方や、直接知り合いになり相談してくる方の多くは…(中略)...私に相談をしてきて、まるで「私には責任はない。どうしたら良いかわからない。答えを教えてください」と言っているような調子なのです。自分の人生なのに、まるで塾でテストの答えを教えてくださいという生徒のようです。

たとえば同調圧力はみんなと同じような「まともな」服を着て、ものを食べ、家を買い、生活をすることを暗黙のうちに求めるが、それは「みんなやっていることだから」で思考停止する結果を招いてしまう。だがこれは考える力、知識を使いこなす能力を奪う。

調べるには「情報を検索して取り出す力」が必要です。さらに、「調べたこと」「覚えたこと」を「解釈」し、さまざまなことを「組み合わせて」「考え」、実生活で直面する問題や課題に対して「自分なりの答えを見つけていく」ことが必要なのです。…普段から物を考えているからこそ、他人が気がつかないような「組み合わせ方」に気がつくのです。このように、知識や情報を「探してきて」「答えを自分で考える」ということが、「使いこなす」ということなのだと思います。

 

読めば読むほど落ちこむが、テキが何者かが分かれば、覚悟ができる。社会を変えることはできずとも、自分自身を変えることはできるーー日本社会を離れなくても。著者は日本を離れ、海外で自力で仕事することをすすめるけれど、実際にこれができる人は多くはないだろう。だが実際には、そこまでしなくても、日本にいながらにして自分自身を変えることはできる。

ただし、これまで依存してきて、こうすることが善だと信じきっていた社会的規範を短期間で自分の心身から切り離すのは、ときに屋上から飛び降りたくなるほどの精神的不安定を招くことがある。わたしはそうだった。飛び降りることを考える時間的余裕もないほどの環境に自分自身を追いこむか、そうでなければリラックスできる環境で、ゆっくり、時間をかけてやることをおすすめしたい。