コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

100語で小説を書いてみたらこうなった『100 TINY TALES』

“Drabble” という英語小説形式をご存知だろうか。100単語の短編小説である。ちょうど100単語、多すぎず少なすぎず。100単語で面白い物語を切り出すことはとても面白い挑戦である。

本書はひとりの小説家が100単語のDrabbleを100本書き下したもの。内容は実にさまざまで、歴史物から現代物、恋愛、喜劇や悲劇、かわいい動物や妖精のファンタジーまで、ころころ変わって読者を飽きさせない。100単語という短さゆえに英語が得意でない人にも読みやすく、1本読むごとに一息つけば疲れないし、なんなら丸暗記だってできる。英語初心者におすすめ。

ただどうしても100単語は短いので、書くことを極限まで削っている。このため、物語のおもしろさを理解するために、多少のアメリカの歴史文化知識が必要になることがある。奴隷解放宣言で有名なリンカーン大統領が劇場で暗殺された、子どもが抜けた乳歯を枕の下に隠しておくと妖精が乳歯と引きかえにプレゼントを置いてくれる、キャンプファイアでチョコクラッカーサンドが定番であるなど、アメリカ人なら誰もが知っていることは、作中ではわざわざ書かれない。物語の面白さがよくわからないと感じたときには、文化背景に踏みこんで調べてみよう。きっと「こういうことか!」と笑い出すだろう。