コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

テーマのある旅に出よう〜成瀬勇輝『自分の仕事をつくる旅』

たまには旅行記を。

この本はただの旅行記ではなく、「自分」という個人商店で売ることができるものを仕入れるという明確な目的を持った「テーマのある旅」の記録。売るものは形ある商品ではなく、誰かが「お金や時間を支払ってでも知りたい、読みたい」と思えるような言葉、情報、経験談。それを仕入れるために現地に行くのだというはっきりした目的と情熱を持ち、仕入れたあとは、それを広めて新しいネットワークのきっかけとする。それが本書ですすめる「テーマのある旅」だ。

この手のもので最も有名なもののひとつが、マルコ・ポーロ『東方見聞録』ではなかろうか。人々が『東方見聞録』を読んだのはひまつぶしのためではない。はるか東方の地に進出できる可能性があるかどうか、考えるための貴重な情報として読んだことだろう。

著者は「テーマのある旅」のメリットを6つあげた。

  1. キャリアにつなげることができる
  2. ひとつのプロジェクトマネジメントを経験できる
  3. マネタイズができる
  4. 会いたい人に会うことができる
  5. 通常は行けない場所に行くことができる
  6. 発信力がつく

 

マネタイズは、クラウドファンディングやスポンサー探しなどの旅行資金集めのこと。旅行で得た情報や経験談をお金に変えるやり方については、ウェブマガジンや雑誌でのコラム執筆、SNSやブログ発信、報告会開催、企画書を企業に売りこむことくらいで、それほど深入りしていない。どちらかといえばやりがいや趣味重視なのが日本人らしい。

本書の著者は「世界のノマド起業家たちに会いに行く」ことをテーマに旅を組んだ。ノマドとは企業や国家の枠組みを越えて、世界を舞台に個人で活躍するフリーランスのこと。なかなかいいテーマだと思う。起業家のいるところにはビジネスの可能性があり、彼らの話を聞くことでその地域のビジネス環境をさぐることができる。また、小さな起業であれば地域密着型である可能性が大きく、地元の生活状況についても知ることができる。本書で紹介されている十数人のノマド起業家たちの物語は、それぞれの性格や特色がでていて魅力的だ。

(どうでもいいことながら気になったのは、「オリンピックには204ヵ国が参加している」という表現があったこと。正確には204ヵ国・地域。地域には台湾・香港などが入る。これわりと敏感なところでは…?世界を旅すると言いながらあまりチェックしていない…?と、気になった)