コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

不動産投資の基礎知識にこの一冊〜大和不動産鑑定編著『不動産の価格がわかる本』

最近不動産購入や不動産投資の話題にふれることが多くなってきたため、勉強するために読んだ。不動産価格鑑定の基礎事項から租税までしっかりおさえていて、かゆいところに手がとどく一冊。最初に不動産市場のサイクルについて述べてから、一般的な価格評価の考え方、個別の不動産評価方法を解説しているところも良い。

本書は投資用不動産を前提としているため、分譲マンションについては扱いがあるものの、ふつう自宅用に購入される一戸建てについての価格鑑定方法はほとんど書かれていないのがちょっと物足りない。また本書は2019年12月25日発行のため、2020年1月からのコロナ禍による打撃は含まれていないが、充分参考になる。

 

不動産市場のサイクルについてメモしておく。

  • 不動産投資や事業の成否は、将来の市況の読みによって決まる。このため、個別の不動産の評価方法を習得する前に、不動産市場のサイクルを理解する必要がある。
  • 不動産価格は基本的にその収益性によって評価されるが、それ以上に金融政策や銀行の貸し出し姿勢の影響を受け、実際にはこれらが大幅な価格の上昇や下落の要因となっている。
  • 日本の不動産市場は比較的長く好況が続いており、国内の状況をみる限り急激な下落は考えにくいが、国際的な情勢の変化や資産市場の動向には注意が必要である。

超ど素人のわたし、「バブル発生期の2.5%から急激に金利を6%まで上昇させたわけですが、これは資産価格を人為的に半値以下に下落させることを意味します。」という記述に?がとびかう状態になり、金利と資産価格の関係をネットで調べる羽目になったが、例えばこういうことらしい。

不動産投資は、債権投資や株式投資など、ほかの選択肢と比べて魅力的かどうかで判断される。魅力的かどうかの判断基準は、投資に対するリターン率だ。

例えば毎月5万、年間で60万円の家賃収入が見込めるアパートがあるとする。債券金利が1%であるとシンプルに仮定すれば、6000万円をこのアパートに投資すれば、表面利回りは債券投資と同じ1%。逆にいえば、6000万円が資産価格上限であると解釈出来る。このアパートが6000万円より高いなら、お金を債券投資にまわしたほうが良い、と投資家は判断する。(実際には不動産維持費やら固定資産税やらかかるため、実質利回りはさらに低くなり、市場価格が6000万円になることはまずない)

さて、金利が2%になったと仮定して同様の計算をすると、毎月5万、年間で60万円の家賃収入が見込めるという条件が変わらない場合、表面利回りが2%になる投資額は3000万円になることがわかる。

これが「資産価格が下落する」ことの意味だ。ちなみに「不動産が将来生み出す利益を予測して、それに基づいて現在価格を推定する」という考え方は収益還元法と呼ばれ、さきほどの金利にあたる数字は不動産鑑定士が言う「還元利回り」にあたる。

なるほど。

となればよく言われるような「低金利で、銀行からお金が借りやすいから、今が不動産の買い時」という説明は不完全で、金利低下による不動産価格上昇、金利上昇による資産価格下落も考えなければならず、不動産投資金利関連の政策には常に目を配らなければならないというわけだ。

 

実際の不動産価格については、国土交通省が提供する不動産取引価格情報や、キャップレート(=還元利回り)マップがあるため活用したい。

国土交通省 土地総合情報システム Land General Information System

CaprateMap