コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

子どもを国際人に育てるために〜谷本真由美『みにろま君とサバイバル 世界の子どもと教育の実態を日本人は何も知らない』

 

イギリス在住、IT業界で働く谷本真由美さん(めいろま@May_Roma)のツイートはいつも興味深く読んでいる。基本的にビジネス環境や社会制度の観点から「日本はここがダメだからこう直せばもっと良くなるのに」という、いわゆる海外出羽守の辛辣なツイートが多い。しかし子育てになると一転、「日本はここが素晴らしい」というツイートが多くなる。

この本はそんなめいろまさんが日英ハーフの息子・みにろまくん(愛称)を授かってから見えてきた海外と日本の子育て事情の違いについてまとめた本。基本的にはイギリス、大陸欧州、アメリカの子育て環境と日本の子育て環境を比較している。

めいろまさんが絶賛しているのは日本の保育所・幼稚園や学童費用が激安であること、治安が良いから小学生だけで出歩けること、小児医療費が無料になる自治体が多いうえに手厚い医療を受けられること。イギリスなどは幼稚園費用が10数万円するうえに夕方までしか預かってくれない。治安が悪い(とくに大都会を中心に暴力沙汰や薬物汚染が日常茶飯事)から子どもだけで出歩くなど到底無理、というか親は子どもをドラッグ(ヘロインなど)から遠ざけるのに必死。病院は自分で選べない(入っている健康保険や地域かかりつけ医により限定される)うえに対応がめちゃ遅くて急症でも数時間待ち、そもそも医師や看護師が移民だらけで英語も満足に通じない。日本社会に慣れた人がそのまま海外に出ればストレスフルどころの話ではないサバイバル環境である。

逆に日本の学歴、とくに大学は海外では認知度が低くてほぼ役に立たないことも、事実として鋭く指摘している。そもそも学歴より「なにができるか」を重要視し、使えないメンバーはプロジェクトチームから外すのも日常茶飯事。日本は少子高齢化が進んで内需がどんどん縮小するから、これからは海外相手に銭儲けをしなければ生き残れないのだが、海外のやり方を理解しなければビジネスはできない、と、これは海外出羽守としての意見。

 

この本を読んでいると、子どもが小さいうちは日本で子育てすれば安心だけれど、ゆるゆる環境の中、成長後は海外で仕事をし、生存できるような考え方と能力を身につけさせなければならないな、と、気が引き締まる。

わたしにも小さい子どもがいる。子どもにどんな能力を身につけてほしいか色々考えている。いま考えているのはこんなところ。結構盛り沢山。

  • 3カ国語(日本語、英語、あとは中国語かな?)
  • 数学の論理的思考能力
  • 歴史(人間社会を理解するために)
  • 科学(とくに医療・健康の基礎知識)
  • 金融(お金の仕組み、利息、複利、投資など)
  • IT(基礎教養)
  • 宗教(基礎教養)
  • 古典文学(基礎教養)

なにより大切なのは、心身健康、健全な人格を育み、冷酷な世間を戦ってゆけるような基礎をつくること。

だからわたしは小学校にあがる前は、子どもの自己肯定感、自己表現力、手を動かす力、みずから選ぶ力、ものごとへの感性を育むこと考えたい。でも気を抜けば自分が良いと思うものを子どもの気持無視で押しつけそうになるから、毎日が試行錯誤。時にはこういう子育て本を読み返して、やりすぎていないか反省する。

一番悩ましいのは、世の中に事実として存在する、不平等や差別や暴力や理不尽をどのように伝えるかということ。おまえはアジア人だからアメリカに行けば差別対象になる可能性があるのだと、子どもを傷つけずにどうやって伝えればよいのか悩む。

歴史から教えるのがひとつの方法かもしれない。どの国の歴史も暴力や裏切りやおもねりや理不尽にあふれている。過去のできごととしてこれらの物語にふれていくことで、現実に向きあうことができるのではないかと、わたしは期待している。