コーヒータイム -Learning Optimism-

本を読むということは、これまで自分のなかになかったものを取りこみ、育ててゆくこと。多読乱読、英語書や中国語書もときどき。

少子高齢化社会を生き抜くために、投資ノウハウについて学ぶ〜広瀬隆雄『Market Hack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法』

 

なぜこの本を読むことにしたか

なぜわたしはこの本を読むために時間を使うのか。

①世界の見方を根底からひっくり返す書物、

②世界の見方の解像度をあげる書物、

③好きだから読む書物

この本は②。Twitterで知った米国在住投資家、じっちゃまこと広瀬隆雄さんのご著書。襟を正して読ませていただいた。

 

本書の位置付け

本書は、金銭欲渦巻く諸悪の根源扱いされることもしばしばのウォール街で数十年間働いてきた著者が贈る投資ノウハウ集。著者自身は以下のように書いている。

ここに書かれているノウハウの多くはアメリカの投資家の間では常識と考えられている普遍性の高いものです。ですから、私個人のオリジナルではありません。むしろ既にウォール街に存在する、それらの無数の知見の中から、(これは本当に役に立つな)と私が感じたものだけを厳選してお届けするというわけです。

 

本書で述べていること

著者はまえがきで、本書の主な内容を箇条書きしている。

 

成功する投資を行うため投資家が守るべき「鉄の掟」

以下に引用させて頂いた。

①営業キャッシュフローのよい会社を買え
保有銘柄の四半期決算のチェックを怠るな
③業績・株価の動きが荒々しい銘柄と、おとなしい銘柄をうまく使い分けろ
分散投資を心がけろ
⑤投資スタイルをきちんと使い分けろ
⑥長期投資と短期投資のルールを守れ
⑦マクロ経済がわかれば、投資家としての洗練度が格段に上がる
⑧市場のセンチメントを軽視する奴は儲けの効率が悪い
⑨安全の糊代をもて
⑩謙虚であれ(投資の勉強に終わりはない)

基本的にどの株式を選び、どれを選んではならないかについての評価基準で、「営業キャッシュフローマージン=営業キャッシュフロー/売上高が15-35%ある会社を狙え」などの評価基準を示しながら、Yahoo!ファイナンスGoogleファイナンスで、どのページなどの数字を参照するべきか、具体的な操作方法とともに教えてくれている。

 

ポスト団塊ジュニア層が投資を始める際、心にとめておくべきこと(NISA攻略法)

ポスト段階ジュニア層とは本書発売時点(2013年11月)で28-35歳の人、つまり日本の少子高齢化のあおりをまともに食う人々のこと。株式銘柄選択法についてはすでに語っているため、投資にあたっての考え方やNISAの紹介がメイン。


デイトレーダーになりたい人はどうやって始めればよいか

デイトレーディングで、手数料の安さからよく利用されるFX(外国為替証拠金取引)、海外先物、CFD(差金決済取引)の3種類の商品についてのノウハウ解説。


長期投資のコツ(ウィリアム・オニールの投資法、ETFの活用法など)

長期投資といえばインデックス投資をすすめられるが、インデックス投資の弱点は「マーケットは長期では右肩上がりである」ことを前提にしている点。著者がウォール街に勤めていた30年は、個人投資家の増加、債権金利の低下など、一貫して株式市場には追い風が吹いていたのであり、この右肩上がり傾向が今後30年間も続くかはわからない。このことを念頭にインデックス投資以外の手法を紹介しており、ウィリアム・オニールの投資法(成長株投資)、ETF投資(ある国の株式市場全体に投資すること。新興国通貨の健全性を日頃からチェックしておくことがきわめて重要という特徴がある)の紹介。

 

2014年の投資機会

「2014年の投資テーマは成長の担い手が新興国から先進国へと変わるということだ」という考え方をベースに投資機会を紹介。

 

感想いろいろ

著者は株式銘柄選択を結婚相手選びにたとえて「キミは結婚できるなら相手は誰でもいいのか? そんなバカな論法が幅をきかせるのは安っぽい投資本の世界だけだ」と喝を入れているが、至言だと思う。ウォーレン・バフェットのおかげで株式の長期保有はかなり一般的になったと思うが、デイトレーディングに専念するのでもない限り、これから数年、下手すれば数十年所持することになるかもしれない株式を選ぶのだから、闇雲に手を出しまくるのはいけない、という考え方には大賛成。

その株式の選び方だが、著者が紹介する指標には、私のような素人にも非常にわかりやすいものが数多く含まれるため、とても参考になる。(玄人向けはこの本の範疇外ともいえる)

一方、インデックスを「都市伝説」「一般大衆を株式投資に引きこむためにねつ造されたキャッチフレーズ」と切り捨てているのはややショック。私などは勉強不足で株式研究のための時間もそう取れない素人投資家であり、インデックスのように「思考停止でももうかります」といわれる投資方法がなければ、そもそも株式市場に手を出そうと考えなかっただろう。だから「てめーは勉強不足だ」と突きつけられると、事実だけに痛い。

大部分の自称草食投資家は、経済や相場の知識が浅く、ただ受け身(パッシブ)でシャイな投資態度こそが正しいアプローチだと勘違いしています。そういう人ほど「株式市場は、長期で見れば右肩上がりだ。だからインデックスだけを買っておけばいい」という都市伝説を鵜呑みにします。でも忘れてはならないのは、一生懸命頭をひねって、このキャッチフレーズをねつ造したのは、他でもない私を含めた団塊世代の証券マンだということです。

とはいえ痛がっていてもしょうがないので、まずNISAとiDeCoは当然にやりつつ、ETFや個別株銘柄についてはこれからどんどん勉強する予定。

 

あわせて読みたい
ヘッジファンド・マネジャーの財務分析」というコラムがあるが、投資家たちの目をごまかすために企業がとってきたさまざまな財務報告不正手法を集めた "Financial Shenanigans" とあわせて読むと大変面白いと思う。

バリュー投資にあたり、グラハムの古典的名著『証券分析』も必読。

グロース投資ではオニールの投資法についての本が参照できる。